悪戯 ページ9
それは小さな手形だった。大きさからして、五歳くらいの子供の手形のように思われる。
誰かの悪戯だろうか。手形の一つや二つ、指を使えば誰でも簡単に描けるとオカルト好きの友人が言っていた。大抵こういうのは今日一番早く来た人か、昨日一番最後に教室を出た人の悪戯というのが定番である。これもその類だろうと判断して、黒板前の集団から外れて自分の席に戻った。
「見た?」
「うん。小さい手形があった」
「どう思う?あれ」
「うーん、ただの悪戯じゃないかなあ」
「だよねえ」
もしも本当に心霊現象であるのなら、普段の私であれば大喜びだが、あの夢を見た後にそんなことを考えるのは抵抗があった。
結局悪戯をしたのは自分だと名乗る人が出ないまま、黒板の前で議論していた人たちは、教室に来た担任の先生に促されて各々の席へ戻って行った。
まあ、これだけ大騒ぎになっていれば名乗りにくいだろうな。
教室のあちこちで手形の話をしていた以外は皆普段通りに過ごし、昼休み。
昼食を食べた後、次の数学の授業が始まる前に、事前に割り振られていた問題の板書をしようと黒板の前に立つ。チョークを持って、黒板を見上げ──“それ”を見つけた。
手形があった。
朝の手形とは明らかに違う。黒板の左端の上の辺りに、小さな手形がついていた。
背中に嫌な汗が流れる。
いつからあったのだろう。気がつかなかっただけで朝からあったのかもしれない。もしくは……。
……いや、考えるのはやめよう。きっとこれも誰かの悪戯だ。そうに違いない。
授業中、何度も黒板消しが使われたはずなのに消えていない手形も、悪戯にしてはどこかおかしいと疑る心も、きっと、全部気のせいだ。
12人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
絹ごし(プロフ) - みるくがーるさん» ご感想ありがとうございます!作品を楽しんでいただけたなら嬉しいです!ギミックですが、ドラッグと言えば伝わりますでしょうか?ギミックは作品の至る所にありますので、是非随所でドラッグをお試しください。 (2020年7月30日 15時) (レス) id: 4bc34f0b9f (このIDを非表示/違反報告)
みるくがーる - ギミックとやらが分からないです…でも、お話は凄い怖くておもしろかったです! (2020年7月30日 6時) (レス) id: e8907ac6ff (このIDを非表示/違反報告)
絹ごし(プロフ) - 斜陽さん» 感想ありがとうございます!作者側だと怖いかどうか分からないので、そう言っていただきとても嬉しいです!ギミックについてですが、一番最後のページに詳細を追加しましたので、お手数ですがそちらをご覧ください。応援も嬉しいです、ありがとうございます……! (2020年7月29日 18時) (レス) id: 4bc34f0b9f (このIDを非表示/違反報告)
斜陽(プロフ) - コメ失礼します。前作「床下の古井戸」も見させて頂きました。正直とても怖くて夜に見るんじゃなかったと後悔しています…。ギミックで鳥肌立ちました。よければどうやるのか教えてくれると嬉しいです!長文失礼しました、これからも応援させて頂きます。 (2020年7月28日 21時) (レス) id: 45dbeb9083 (このIDを非表示/違反報告)
絹ごし(プロフ) - ずんだ猫。さん» ご感想ありがとうございます!ギミックはこの作品で一番こだわったところなので、楽しんでいただけたなら嬉しいです!作品を作る頻度は低いですが、自分のペースで頑張りたいと思います! (2020年7月25日 23時) (レス) id: 4bc34f0b9f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:絹ごし | 作成日時:2020年7月24日 17時