届けたい想い (ページ38)

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藤ヶ谷ｓｉｄｅ

美鈴「そろそろ朝食の支度しようかな。」

「みんな寝てるから、まだいいんじゃない？」

俺は、まだ一緒にいたくて、そんなふうに言って、優しく抱きしめた。

美鈴「えっ？太輔くん？」

「少しだけ、もう少しだけ、このままでいさせて。」

表情が見えないまま後ろから抱きしめられてる美鈴さんは頷いてくれた。

美鈴「ドラマの１シ－ンみたい･･･。相手役が私で、ごめんね？」

「美鈴さん、恥ずかしいの？」

抱きしめる腕の強さを緩めて、そう聞いてみた。

美鈴「･･･うん、あんまり慣れてなくて･･･」

すごく、可愛くて、ドキｯとした。

けど、そんなの一瞬で、

美鈴「夫が亡くなって、
　こんなふうに、男の人に抱きしめられたの初めてだし。」

その言葉に俺は、慌てて抱きしめてた腕を解いて、

「あ、ごめん、イヤだった？」

不安な気持ちで、美鈴さんの顔を見つめる。

美鈴「太輔くん、そんな不安そうな表情しないで。」

「だって、俺、前に、美鈴さんのこと」

美鈴「あのときは、ちゃんと話せなくてごめんなさい。
　昨日、柚希が話してたことが、すべてだから･･･。」

そう言って優しく微笑む美鈴さんは、やっぱり素敵で、

美鈴「本当は、ちゃんと、私の言葉で伝えられたらよかったんだけど、
　でも、柚希が話してくれなかったら、まだ、言えてなかったと思うから、
　昨日のタイミングも、ありだったのかなって思ってる。
　けど、聞かされた人たちは、いきなり、えっ？って感じだよね(笑)
楽しく盛り上がってたのに、申し訳なかったな。」

ちゃんと、周りの人の気持ちに寄り添える人だと思った。

「気にしなくて大丈夫だと思うよ。
　宮田と千賀は寝てたし、ニカもかなり酔ってたしさ、
　記憶があるとすれば、北山・渉・玉と、俺かな。」

美鈴「忘れててくれたらいいんだけど･･･」

「北山と渉は、大人だから、忘れたふりしてくれるんじゃないかな？
　けど、玉は、どうかな？」

美鈴「そっか･･･」

「玉のこと、気になる？」

美鈴「えっ？」

「あ、ううん、何でもない。」

美鈴「太輔くん？」

心配そうに見てくる美鈴さんから視線をそらして、

「あ、ほんと何でもないから。
　それより、そろそろ部屋に戻ったほうがいいんじゃない？
　優弥くん、起きてるかもしれないし･･･。」

俺が、一緒にいてってお願いしたのに、

今度は、かっこ悪いけど、逃げるみたいにそう言ってた。