心酔―過去編 ページ9
「大きくなったら、晋ちゃんと結婚するの!」
もう顔もうっすらとしか覚えていない母様は、それを聞くと笑って、緩やかに頭を撫でてくれた。
そんな母様が死んじゃってから、あの家は寂しく、冷たくなった。
だけど怖くはなかった。
父上と会う時はいつも緊張する。だけどそんなあたしの頭を、いつからか撫でてくれるようになったのは晋ちゃんになって、晋ちゃんが居れば、わたしはなんだって出来た。
「A、父上はこう言ってるんだ」
父上の話も理解して聞けるようになったし、正しい返し方も学んだ。
晋ちゃんよりはスマートに熟すことが出来ないわたしにも、父上と居る時の食事の仕方や礼儀作法もいつからかできるようになった。
松陽先生に教えを授かるようになったのも晋ちゃんと一緒だから。
全ては晋ちゃんが居たから。
晋ちゃんは何でも知っていて、何でもわたしに教えてくれた。
「頭が良いね。」
「なんでも出来るね。」
学問だって剣術だって、晋ちゃんと一緒にやっていれば、わたしは人に誉めてもらえた。
「料理もできるなんてさすがだね。」
「さすがAさんね、本当に美しいわ。」
晋ちゃんに少しでも笑いかけてもらうために、容姿も中身もしっかりと磨いた。
だけど人の上に立ちたいとは思わなかった。
わたしは晋ちゃんのお飾りだから。
晋ちゃんが居たから今のわたしがあるだけで、晋ちゃんが居てこそのわたしが、人の上になんて立てない。
それをいつしか晋ちゃんに話した時、お前はそれでいいと言われて、少なからずホッとした。
「そんなこと、Aには必要ねえよ。だから安心してろ。Aには俺がついてるから。」
やっぱりわたしには晋ちゃんが居ればいい。そう思った。
大好きな晋ちゃん。
世界で一番の晋ちゃん。
わたしにとって、絶対の晋ちゃん。
ずっとずっと、わたしは晋ちゃんと一緒。
「わたしって、変なのかな。」
14歳にもなれば、そろそろ自分のこの気持ちは、一般的非常識に値する部類だと勘づき始め、わたしは初めて相談という意味合いを込めて、他人にこの気持ちを話した。
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ユイ - 高杉のヤンデレ(果たしてこれはヤンデレ...だよな..?)は最高ですなああ立場反対でも妄想したら最高だわ (2022年12月3日 1時) (レス) @page44 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー - 後ろから5行目の銀時って、桂の間違いじゃないですかね?? (2018年11月30日 1時) (レス) id: 6bc829527b (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - くれさん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - メイビスさん» ありがとうございます!コメント、本当に嬉しいです。これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - カチカチ☆百足姫さん» ありがとうございます!コメント、本当に嬉しいです。これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あつぽん | 作成日時:2015年3月7日 17時