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第73話 ページ29

「そうかあ…?

ま…確かにぱっと見は似てるけど、色気とか"しな"とかがAには足りねえよ」


「どういうことよ」と唇を尖らせて言うと、すかさず「Aは沖田くんとの方が似てるよ」なんてつけ加えられる。


「…そんなこと言われたの、初めてだよ」


「えーマジでか……ま、俺が言うんだから間違いねーよ」


「ふふっ…そうかもね」


そう言って笑ったAはもう一口、煎餅に口を付ける




「アイツさぁ、土方。それ食いながら泣いてたよ」


「…そっか」


「もう、許してんだろ?」


「許すも何も…さ、」

「…?」

「そーちゃんも言ってたけど、あたしたちにはこれ以上何か言う資格なんてないよ。」


Aは一口、煎餅に口を付け、再び口を開く。


「土方さんは…土方さんなりのやり方で、姉上を大事にしてた。

それをちゃんと分かってて、姉上は幸せだったんだよ。

だから、私たちには何にも言えない。」


「辛。マジコレ辛。ちょ、水持ってない?」


「聞いてないでしょ」


銀時は手渡されたお茶を飲んで、Aに向きなおす。


「そうか…」


銀時はAの頭に手を置いた。


「考えてんのは土方の事じゃねぇんだな、自分の事か」


Aは顔を伏せたまま、小さく頷いた。


「小さい頃から面倒見て貰っておいて、一人ぼっちで置いてきちゃったんだもん…。

ほんと、酷い妹だよね。」

「………」

「あたしさえいなかったら…姉上は他の誰かと普通に幸せになれたかもって、思った事は思った。」

「………」

「…けど、さ」


「違うよなぁ、そんなの」


銀時の言葉にAは頷く。


「そんな今更どうにもならない事、考えても仕方ねえよな…」


「…だから、何も考えないようにしてた」


「思い出しても、やらねぇの?」


Aは隣に座った銀時の横顔を見つめた。


少しだけ間を置いて、銀時は考えるように口を開いた。


「考えてもどうにもならないって解ったら、後は思い出して、泣いて、笑ってやればいいんだって…」


月明かりに照らされた銀時の横顔が白く浮かび上がり、その表情は固く強張る。


「俺も最近、ようやく気付いた…」

それは自分のとは比較出来ないくらい、重い過去を持った人間の言葉に聞こえた。

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あつぽん(プロフ) - アルハさん» ありがとうございます!!!私としてもすごく思い入れのあるこの作品についてそういうコメントいただけるのはすごくうれしいです!これからもよろしくお願いしますね(*^_^*) (2016年12月7日 11時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 1から読みました!話に引き込まれていって凄く面白かったです!!最高!!! (2016年12月3日 14時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - みゅうさん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - あつぽんさんの作品は全て読ませてもらっています!どれも面白くて大好きですっ!これからも頑張って下さいq(^-^q)応援しています(*´ω`*) (2016年8月2日 19時) (レス) id: ad4e56f403 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 月夜さん» おおおお!総悟&神威好きに出会えるとは!!わたしも大好きなので、喜びのあまりにやにやがとまりません(笑)実は私の作品、神威が活躍するの多いんですよ(笑)これからも楽しんでいただけると嬉しいです♪ (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あつぽん | 作成日時:2016年2月6日 10時

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