第46話 ページ2
「Aには女として、それなりの幸せを与えてやりてェ。」
暫しの沈黙の後で口を開いた土方。
「普通に恋をして、好きになった奴と幸せになって貰いてェんだ。
たとえ…それがお前でもな。」
いつもの様に絡んでくるのでは無い落ち着いた言葉。
「………」
返事をしないものの、なんとなく耳を傾けていた。
「あいつらがあんな関係になっちまったのは、間違いなく俺に責任がある。アイツらから大切なもん奪って、」
。
絞り出すようにして話すこいつの姿を見るのは、彼女の姉が亡くなった日以来かもしれない。
「最低な話だが…Aのことをミツバと重ねていたこともあった。
勝手な理想を押し付けてきたのかもしれねェ…。
だけどよ、AはAとして、本当に大切に思ってきたつもりなんだよ。」
寂し気に、そして一抹の後悔を孕んだ奴の言葉。その意図は、なんだか理解できるような気がした。
Aの悪戯なんて沖田くんがする悪戯に比べれば可愛いもの。
なのに、黒い笑みを浮かべながらも時々楽しそうな表情で走る沖田くんとは反対に、時折ひどく冷たい目で土方を見るA。
その様子が、俺から見れば物凄く寂しい景色に見えたのだ。
「わかってるよ、お前の気持ちなんて、アイツには。」
「ッ……」
「だからこそ、苦しいんだよ。」と、小さく微笑むと、再びグラスに視線を移す。
「大切なもんなんて、怖ェーよな…」
誰に向けての言葉か、ひとりでに呟いていた。
取り残された経験があるからこそ思う。
"もうあんな思いはしたくない" "もう誰にもあんな思いはさせたくない"
「だけど、Aは…俺に沢山温もりをくれて、もう一度誰かと笑いあう喜びなんてモンを教えてくれた。」
そんなあいつを、俺なんかが汚しちゃいけねェとか、怖くなってるうちに…アイツを傷付けてたんだよな。
だけど…
「俺さ…自分でも呆れるくらいに諦め悪ィのかもな」
口に出すと柄にもなく照れ臭くなっちまって、「お前んとこのゴリラ、馬鹿にできねえわ」とわざと茶化す。
「るせーよ」と言いつつも笑う土方。
どちらともなく席を立ち、別々の方向へと帰路についた。
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あつぽん(プロフ) - アルハさん» ありがとうございます!!!私としてもすごく思い入れのあるこの作品についてそういうコメントいただけるのはすごくうれしいです!これからもよろしくお願いしますね(*^_^*) (2016年12月7日 11時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 1から読みました!話に引き込まれていって凄く面白かったです!!最高!!! (2016年12月3日 14時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - みゅうさん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - あつぽんさんの作品は全て読ませてもらっています!どれも面白くて大好きですっ!これからも頑張って下さいq(^-^q)応援しています(*´ω`*) (2016年8月2日 19時) (レス) id: ad4e56f403 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 月夜さん» おおおお!総悟&神威好きに出会えるとは!!わたしも大好きなので、喜びのあまりにやにやがとまりません(笑)実は私の作品、神威が活躍するの多いんですよ(笑)これからも楽しんでいただけると嬉しいです♪ (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あつぽん | 作成日時:2016年2月6日 10時