第28話 ページ30
多分、求めているんだと思う。
消えない事実に、溺れた自分に。
手を差し延べてくれる誰かを。
そんなくだらないこと。
考えるしか今は出来ない。
だって今、こんなにも焦がれている。
人に。 温もりに。 愛、に。
・
時計を見ると針は六時少し手前を指している。あの後、二度寝をすることはないまま、布団の中でぼーっとしていたようだ。
依然として眠る彼女の肩に布団をかけてやると、刀の手入れでもしようと起き上がる。
「刃こぼれしてらァ…コイツとも長い付き合いになるから仕方ねぇか、」
彼女の温もりから離れ、代わりに冷たい金属の重みが手に触れる。
「随分と色んなモンを斬ってきたねィ」
“振り返っちゃダメ” あの人は言った。
“自分で選んだ道でしょう“ あの人は笑った。 やわらかく、儚く。
そう、自分で選んだ。あの時、確かに。
だけど、
“だったら、謝ったりしたらダメ”
浮かぶのは、想い出と、後悔と、もうひとつ。
“泣いたりしたら、ダメ”
そんなこと言わないで。
こんなにも、自分が嫌で嫌で仕方ない、僕は。
俺は、どうすれば、謝れずにいられるのですか。
ふと庭を見遣ると、先々週あたりから蕾をつけていた桜の木は、あっという間に満開になっていた。
ふと見上げると風に吹かれ花びらが舞う。
柔らかなその薄紅にそっと面影が重なった。
花のようにきれいで儚いひとだった。
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あつぽん(プロフ) - 白雪さん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
白雪 - これ面白すぎです (2016年8月23日 20時) (レス) id: 7a9606292a (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます!コメント、本当に嬉しいです。これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月(プロフ) - 続き楽しみです!更新頑張って下さい♪ (2016年2月5日 17時) (レス) id: 5defdd12f1 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 高杉銀時さん» コメントありがとうございます!楽しみにしていると言っていただけると、すごくテンション上がっちゃいますよー(*^O^*)これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします ! (2016年1月12日 19時) (レス) id: df8f2d9e4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あつぽん | 作成日時:2016年1月4日 14時