TO BE WITH YOU (ページ20)

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困った。

お見合いを回避したいために彼氏がいると母に告げると、その彼氏を家に連れて来るように言われてしまった。

お見合いの話があるのは本当のようで、私の彼氏を見て納得の上で、正式にお断りしたいとのことだった。
母曰く、私にはもったいないくらいのお相手だそうで。

そもそも彼氏と言ってもいいのか微妙な時期に、結婚を前提にお付き合いしているという体で、和君を親に紹介するなんてできるはずない。

お見合いだ結婚だ、と急に言い出した母に戸惑ったけれど、母は私の歳にはもう私を産んでいた。
私はもう、そんな、歳なのだ。

繁忙期だと言う和君とはなかなか会えなかったけれど、お互いに前よりは蜜に連絡を取るようになったから、とても嬉しくて。

だけどうちの親に会って欲しいなんて、そんな重いことは言い出せずにいた梅雨の終わり頃、春の同窓会でまた連絡を取り合うようになったメンバーから飲み会をするという連絡があり、私は土曜の書道の稽古を終えてから、その会場に向かった。

「ごめんね、遅れましたー」
「A、遅いよー」
「これで全員揃ったな！」

遅れた私のためにみんながもう一度乾杯してくれて、近況なんかを話していたら、トイレに立った和君が戻って来て私の隣に座った。

ちらりと左側に視線を向けると、和君はビールを飲みながら、ん？と首を傾げたから、何でもないよ、と言う代わりに首を振って見せる。

わざわざ隣に来てくれたのが嬉しかっただけなの。

その後、私達は特に会話もしないし視線を交わすこともしなかったけれど、和君はテーブルの下で、利き手じゃない右手で、これまた利き手じゃない私の左手をずっと繋いでいてくれた。

指を組み替えたり、親指で手の甲を摩ったり、ぎゅっと力を入れたり。

皆に隠れてじゃれ合いながら、友達とたわいもない話を楽しんだ。

愛されているって、感じていた。