【文スト】大好きな貴方に、手袋を買いに。【男主】

探偵社の皆様へ

お元気ですか。
多分、皆がこの手紙を読む頃には、俺はみんなとしゃべれる状態じゃないのだと思います。

俺は、皆に隠していたことがいくつかあります。
自分の口から伝えられなくて、ごめんなさい。
俺は、お休みするちょっと前から結核にかかっていました。
結核は感染して、発症してしまうと死んでしまうかもしれない病気です。
早くに発見できると病院で治してもらえるけど、俺は死を選びました。

それは、俺の異能力のせいもあります。
でも、俺は異能力を恨んだことはありません。
だって、この異能力がなかったら皆に出会えなかったからです。


俺は、ほんとうは人に化けたきつね、です。
太宰さんがマフィアのお仕事で俺の育ての親を殺しました。
俺の育ての親はたぶん、ほんとうのお父さんであり、もとはきつねだった人間でした。
隣でお父さんが殺されたとき、俺は子ぎつねから今の人間の姿になりました。
俺の先祖はだいだいこの異能力が受け継がれているのだと思います。
本当は力が受けつがれてコントロールしないといけないけど、幼かったので暴走して人間の姿になり戻れなくなったのだと思います。

だから、俺の寿命はきつね相応で、人間みたく長く生きられません。
俺は何となくわかっていたから、結核にかかって無理やり治してもらってももう長くなかったと思います。


本当は今すぐにでも皆に会って、直接にさようならを言いたいです。


でも、もうおれの体はいのう力を保っておけるほど力がないみたいです。
あつしのいのう力が人からトラになるように、おれはキツネから、人になります。
あつしがトラになると我を失っていたように俺もなってしまいます。


おれの左のお手々は、もう、キツネのお手々です。

まちがえていつもみたいにしようとして、コップがもてませんでした。
せっかくおぼえたかんじも、むずかしい言葉も、あんまり思いだせません。
でも、みんなのかおだけはせめてわすれないように、ずっとそうぞうしています。
みんながこのてがみを、よむころには、きっとおれはキツネになっているでしょう。

そうだ、わすれるまえに、ここにかいておきます。
みんな、ひとりひとりにおてがみをかいたのが、おくのタンスの、にだんめにしまってあります。

ふくざわしゃちょう、らんぽ、よさの、くにきだ、あつし、じゅんいちろう、なおみ、けんじ、太宰、たんていしゃのみなさん、いままでありがとう。

新美A