10-3 病床に臥す ページ43
確かに聞こえたその病名は、私にとって余りにも辛かった。
否、一番辛いのは本人だろうけど、
脳が働くことを拒絶しているように頭が痛くなって来る。
『太宰、太宰?大丈夫……?!』
「あ、嗚呼、大丈夫だよ。Aが一番辛いはずなのにね、私がショック受けて弱ってちゃいけないね……」
『ううん、俺は何となく覚悟してたし、辛くないよ。太宰はショック受けるかなって思ってたのも言いたくなかった理由の一つだし』
理由の一つというなら、他にも理由があるということか、グワン、グワンと揺れる脳味噌で思考する。
『でも、太宰に言ったら拒絶されるかも、って思ったら怖くて言えなかったのが一番の理由。感染症だしね』
「ふざけないで!私が、拒絶するかも何て考えるAの方が余程馬鹿だろう……!もっと早く言ってくれれば……」
もっと、早く、言ってくれれば―――
しかし、突き付けられた言葉は余りにも過酷だった。
『変わらないよ、何も、ね。
もっと早く言ったって、
「っ……」
『言ったでしょ?俺の病気は
【結核】
それは、一昔前に国民病或いは亡国病とまで呼ばれた何とも惨たらしい感染症だ。
有力な治療法は見つからず、感染したものは等しく死に追いやる死病。
現在では対策として治療法は見付かっているが、必ず患者は厳重に隔離される。
しかし、喉の病状の悪化に伴う喀血までくると末期と言われている。
つまり、そこまで来ればもう回復を容易く出来る地点ではない、ということ。
「……A、喀血は?」
尋ねれば、Aは伏し目がちに目を逸らす。
私がはぐらかさないで、と視線で訴えれば何とか向き合おうとしてくれる。
『……した。っていうかしてる。仕方がない、俺は医学に頼ってまで治したくないんだよ』
「……そう、っ……これが、Aが望んで決断した事なら私は……、」
____受け入れよう____
絞り出した声は余りにも情けなかった。
『ごめんね、太宰……何か、いっぱい、色々とごめんなさい……っ』
「謝っては駄目だよ」
『……う、ん……っ病院には行った、病名を聞くまでは頑張った、けど……矢っ張り怖くなって……』
こんな小さな背に沢山抱え込んで辛かったろう。
『っ……本当は墓まで持っていこうと思ってたのに……!』
一度零した弱音は泥濘んだ山の土砂のように口をついて溢れ続ける。
一滴溢れた涙は決壊した川の濁流のように次々と零れてくる。
97人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
霜月まぎか(プロフ) - 妃有栖さん» え、え、読んでくれただけで死ぬ程嬉しい有難う!!!私も書きながら泣いた(( (2018年1月10日 23時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
妃有栖(プロフ) - 読破遅くなってしまって申し訳ない……ちょっと真面目に泣いたんだけど……夢主くん最初はめちゃくちゃ可愛いショタだって思ってたら最後はもう……!涙出てきた……夢主くん辛いけど幸せだっただろうねぇ…… (2018年1月10日 22時) (レス) id: 6bd3aaf7a9 (このIDを非表示/違反報告)
霜月まぎか(プロフ) - りつさん» 有難う御座います!現在進行系で読んでくださる方がいらして嬉しい限りです!頑張ります! (2017年12月9日 19時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!これからも応援してます! (2017年12月9日 11時) (レス) id: 9f104312a4 (このIDを非表示/違反報告)
霜月まぎか(プロフ) - おこめりんぐさん» 有難う御座います!!え、凄い嬉しい…!!同じ受験生何ですね!頑張りましょ!応援とかコメとか本当に有難う御座いますうう (2017年11月27日 16時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ