9-2 太宰と女性とミニ家出 ページ36
「貴方なら、分かってくださる。
貴方なら……貴方なら、私を……。
嗚呼……死ぬ前に私は、どうしても本当の愛が欲しくて……」
そう言って彼女は私を押し倒そうと、のしかかって来た。
名前も知らない女性に本当の愛情など、持てるわけがない。彼女はそれに気づけない。
恐ろしいほど愛に餓えていた彼女は、本当の愛など露知らず、少しの慈悲を愛と勘違いする。
「少し落ち着きませんか。人間には本当の愛情を推し量る事など出来ないのです」
少し拙い、と思うも女性に力は奮えない。諭そうとするもまるで聞き耳をもたない。
抱きしめるふりをして致し方なく気絶させようとした刹那。
『……な、何やってんの。あ、嫌、べ、別に、太宰にこういう事駄目とは、云って、ないけど……。
でも、こう言うのは、その、違うとこで……！
っ暫く帰らないから！！』
靴が二つ有る辺り、玄関で察しては居たのだろう。
顔を真っ赤にしたAは、整理出来ていない気持ちを其の儘ぶつけ、去っていった。
やってしまった。
「お、女……？あ、貴方も、他に女がいたのね……？！通りで、余裕があると思ったわ！私を、騙し」
「弟ですよ。六つか七つ程離れた弟です。
未だ変声期も迎えて居ないだけです」
私と向かい合って壁の方を向いていた彼女にはAの声だけで女と判断してしまったようだ。
彼女の言葉を遮って弁解する。
「すみません、お嬢さん」
そして、謝罪を述べて彼女を気絶させた。
その後こっそり、出会った川辺の同じ場所に寝かせて置いた。
外に寝かせるのは紳士として失格ではあると思うが何せA絡みなので致し方ない。
飛出したAを見つけるべく、現在地から一番近い探偵社員の家から順番に訪問する。
暫く帰らない、というのは恐らく一夜は家を空ける調子だろう。
つまり、Aは知り合い――探偵社員――の何れかの家に居ると言う事だ。
取り敢えず、此処から一番近い谷崎兄妹宅の呼び鈴を鳴らした。
「はい！――って太宰さん？一体如何されたんですか」
普段滅多に訪れないのもあって、少し吃驚された。
この返事ならAも来てないのだろう。
「嗚呼、Aを探しているのだけど、居ないみたいだね、済まないね」
当の私も余り余裕がなく、一方的にそう云いつけて踵を返した。
丁寧に、背後から「若し見つけたら連絡します」と叫んでくれた。
「嗚呼。若しそんな事が有れば、宜しくね」
きっと探しにでも行かない限りは見つからないだろうけど。
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霜月まぎか(プロフ) - 妃有栖さん» え、え、読んでくれただけで死ぬ程嬉しい有難う！！！私も書きながら泣いた(( (2018年1月10日 23時) (
レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
妃有栖(プロフ) - 読破遅くなってしまって申し訳ない……ちょっと真面目に泣いたんだけど……夢主くん最初はめちゃくちゃ可愛いショタだって思ってたら最後はもう……！涙出てきた……夢主くん辛いけど幸せだっただろうねぇ…… (2018年1月10日 22時) (レス) id: 6bd3aaf7a9 (このIDを非表示/違反報告)
霜月まぎか(プロフ) - りつさん» 有難う御座います！現在進行系で読んでくださる方がいらして嬉しい限りです！頑張ります！ (2017年12月9日 19時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです！これからも応援してます！ (2017年12月9日 11時) (レス) id: 9f104312a4 (このIDを非表示/違反報告)
霜月まぎか(プロフ) - おこめりんぐさん» 有難う御座います！！え、凄い嬉しい…！！同じ受験生何ですね！頑張りましょ！応援とかコメとか本当に有難う御座いますうう (2017年11月27日 16時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
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