9-1 太宰と女性とミニ家出 ページ35
(太宰side)
今日も川を流れようか、入水でもしようか、なんてぼんやり考えながら川沿いを歩く。
しかし、今日はいつもと違うものが目に入った。
長髪が似合う所謂美人に分類されるような女性が、憂鬱そうに川に向かって座り込んでいたのだ。
「やあ、其処のお嬢さん、私と心中してくれませんか?」
川辺で感傷に浸る美人さんを見つけた。
この人なら心中に乗ってくれそう、と直感で思い心中を申し込むまではテンプレだ。良く有ることだ。
大抵は断られるのだが。
しかし、私はこの時少し人選を間違った様であった。
「心中?貴方私の事が好きなの?」
「ええ、一目でとても美しい方だと思いました。悩みがあるのでしょう?
それなら一切合切忘れて私と川に溺れてみませんか」
「悩み……そうね、では私の悩み聞いてくださらない?そうして共有できたなら、私は貴方と未練なくしてこの人生を終えられるでしょうから」
「勿論。そう云うことなら、幾らでも」
元々私の心中の誘いに容易く乗ってくれる美女など極稀だったため、悩みを聞くくらい苦ではない。
「でも、此処ではどうしても話せなくて……一度貴方の家にでも寄せてはくれませんか……。私にはもう、家もなく……嗚呼っ……」
伏目がちに彼女は話し始め、最後には顔を手で覆って涙し始める。
「店などでは、話せないことなのですね?」
Aは家に女性を連れてくるのは余り好いていない為、何時もはせめて店、と決めている。
しかし、こうも涙されては彼女を説得も出来無かった。
まだAは探偵社だろうし、話を聞くだけなのだから……大丈夫だろう。
そんな甘い考えで私は彼女を家に招き入れた。
何処から間違っていたのだろう。
彼女を家に招き入れる所か?心中に誘うところ?
……否、声をかけたのが既に過ちであったのか。
「嗚呼……私は誰からも愛されてなど居なかったのです。三年もお付き合いしていた男性は先程、お前はもう要らぬと申して家から私を追い出した……。
血の繋がった家族でさえも、私を除け者にして……嗚呼……」
家に招き入れると、早々に泣き出した。
私は心中がしたいだけだ、愛を語られてもどうしようもない。
だが、少しの我慢できっと素敵な心中が出来る。
「辛かったね……でももう無理して生きる必要なんてない」
私は色々な相槌をうって間を繋いだ。
それにしても、家に入って迄する話ではなかった。これは少しややこしいことになるかもしれないなあ。
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霜月まぎか(プロフ) - 妃有栖さん» え、え、読んでくれただけで死ぬ程嬉しい有難う!!!私も書きながら泣いた(( (2018年1月10日 23時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
妃有栖(プロフ) - 読破遅くなってしまって申し訳ない……ちょっと真面目に泣いたんだけど……夢主くん最初はめちゃくちゃ可愛いショタだって思ってたら最後はもう……!涙出てきた……夢主くん辛いけど幸せだっただろうねぇ…… (2018年1月10日 22時) (レス) id: 6bd3aaf7a9 (このIDを非表示/違反報告)
霜月まぎか(プロフ) - りつさん» 有難う御座います!現在進行系で読んでくださる方がいらして嬉しい限りです!頑張ります! (2017年12月9日 19時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!これからも応援してます! (2017年12月9日 11時) (レス) id: 9f104312a4 (このIDを非表示/違反報告)
霜月まぎか(プロフ) - おこめりんぐさん» 有難う御座います!!え、凄い嬉しい…!!同じ受験生何ですね!頑張りましょ!応援とかコメとか本当に有難う御座いますうう (2017年11月27日 16時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
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