【文スト】大好きな貴方に、手袋を買いに。【男主】

5-5　男で良かった ページ21

ー ー ー 


『今日は本当にありがとうございました。俺もぶつかったのに、一方的にお詫びとかさせちゃって……』

「いいや、いいのだよ。
Aくんとは一度会ってみたかったからね。あの大宰くんが隠してまで一緒に住んでた子なんてね」

『あー……』

太宰さんが頑張って隠してたのに今日こんな仲良くしてしまったよ……。何か御免。
で、でも元はと言えばどっか行った太宰さんのせいだよね。



「――――どうやって化かしたのやら」

え？
とても小さなものだがはっきりと、森さんのこぼした声が俺の耳に届く。

「なんてね、冗談だよ」

『…………』

逆光と夕日のせいか、笑顔でこっちを向いた森さんの顔に赤黒い影が掛かり、ゾッとする。
　


「太宰くんなら、スーパーの右の角を曲がったところの川に行ったのを見たよ」

「A！ また一緒にクレープ食べましょうね！」

『あ、ああ。ありがとうございます。
うん、エリスまたね』


森さんとエリスとは逆方向なようなので別れを云って立ち去る。



――化かした、ね。

少しだけ哀愁漂う笑顔を浮かべて、太宰を目撃したと云われた川に向かった。

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