10-5 病床に臥す ページ45
会いたいと言ったのは紛れもない俺なのだが、余り深入りされたくない処の為、話を逸した。
「社長、乱歩さん、与謝野女医は大体仕事の関係で居ないよ。後は家の大きさも考えて事務員には声掛けてない」
『そっか、じゃあ俺は元気ですとでも伝えておいてよ』
「とても元気には見えないけど……。
さっきから咳込んでるし……」
すかさず敦からのツッコミが入る。
「御見舞に来てくれた事だし、精神的には大分楽になったんじゃない?
あ、私も伝言を貰って居てね、みんな等しく泣く泣く仕事に向かった事も踏まえて」
今日来られなかった社長と乱歩と与謝野からの伝言を太宰から受け取る。
来られなくても、皆がまだ俺に失望して無いと伺えて太宰の言う通り、幾分心は軽くなった。
其れから、他愛もない話を数十分して、最後に仕事に暫く行くことができなかった事に付いて謝罪もした。
『今日は本当に有難うね、元気でたよ。
明日からも未だ暫く休むことに成りそうだけど御迷惑をお掛けします』
「気にするな、お前は病気の事だけ考えて早く治せ。
……そうじゃないと太宰の分まで仕事の能率が下がるからだ!」
「A君の分まで頑張るから、早く良くなってね」
「皆さん、A君が居ないとどうも落ち着かないようですわ。勿論ナオミもですわ!ね、兄様!」
「はは……本当にね。元気になったらナオミとお祝いのケーキでも焼くね」
「今度、僕の地元で採れた野菜、持ってきますね!栄養たっぷりですから!」
「じゃあ、私が玄関まで見送ってこよう」
お互いドアのギリギリまで近寄って話していた温もりが足音と共にゆっくり遠ざかっていくのが分かった。
俺は、手に握っていたマスクを付け、そうっとドアを開けて、彼らの後ろ姿を直に見送った。
彼らは、俺がいないと落ち着かない、淋しいなんて言ってくれるが、きっと俺が居なくたって理不尽に世界は回っていくのだ。
きっと数年も経てば皆は俺を忘れる。
俺もきっと皆のことを忘れてしまうかもしれない……怖くて仕方がない。
見送りが終わった太宰の足音が俺の方に向かってくる。
____もうそろそろかな、
あと何日もつかも分からない体を見つめる。
太宰とは最期まで一緒にいたい、という俺の願いも叶えばいいな。
「ただいま、A」
『おかえり、太宰』
___いっぱい話したいんだけど、聴いてくれる?
____嗚呼、勿論だとも。
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霜月まぎか(プロフ) - 妃有栖さん» え、え、読んでくれただけで死ぬ程嬉しい有難う!!!私も書きながら泣いた(( (2018年1月10日 23時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
妃有栖(プロフ) - 読破遅くなってしまって申し訳ない……ちょっと真面目に泣いたんだけど……夢主くん最初はめちゃくちゃ可愛いショタだって思ってたら最後はもう……!涙出てきた……夢主くん辛いけど幸せだっただろうねぇ…… (2018年1月10日 22時) (レス) id: 6bd3aaf7a9 (このIDを非表示/違反報告)
霜月まぎか(プロフ) - りつさん» 有難う御座います!現在進行系で読んでくださる方がいらして嬉しい限りです!頑張ります! (2017年12月9日 19時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!これからも応援してます! (2017年12月9日 11時) (レス) id: 9f104312a4 (このIDを非表示/違反報告)
霜月まぎか(プロフ) - おこめりんぐさん» 有難う御座います!!え、凄い嬉しい…!!同じ受験生何ですね!頑張りましょ!応援とかコメとか本当に有難う御座いますうう (2017年11月27日 16時) (レス) id: f7c4cbe325 (このIDを非表示/違反報告)
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