6.追憶 ページ9
＊
何もかもが気に入らなかった。
ちょこまかと姉さん、姉さんと付いてきては勝手に転んだり面倒事を起こしてくるところ。子供らしくて愛想が良くて、みんなに気に入られているところ。時々、こちらを見透かしているような目をするところ。…挙げていけばキリがないほどに、不出来ながら人の愛を向けられてばかりの弟が嫌いで仕方なかった。
ただ、少しだけ、可哀想な所もあったように思う。
＊
「ごめ…ねえさん…」
「どうしたの、また発作？薬は飲み忘れていない？」
いつもコホコホと咳き込んでは噎せての繰り返しだ。
急いで背中をさすってやると多少は落ち着いた様子だったものの、少し経つもまた何度も何度も咳が止まらなくなってはヒュウ、と苦しそうな息をする。
いくら嫌いだといってもあまりの容態にAも放っておくわけにもいかず、部屋が同じだったこともありいつも世話を焼いていたのだった。
「うう、ん、大丈夫。僕、は大丈夫だから…ごめん、声なんかかけちゃって…姉さんは僕が嫌いなのにね」
眉をへの字に下げたまま、彼はそう言って何ともないように笑う。彼女は彼のそういうところが嫌いだと言うのに。
「…そうね。嫌いよ、どうしようもなく」
「どうしたら、姉さんは僕のことを好きになってくれる？」
「知らないわそんなこと。嫌いなものは嫌いなんだから」
非難の意味を込めてぷい、と顔を背けた。が、後ろで彼がおかしそうに肩を震わせているのがなんとなく気配で分かった。
「ふふ。姉さんって意外と優しいんだね」
「な、なんでそうなるのよ…」
「だって、僕の言葉ひとつひとつをきちんと返してくれる」
勢いよく彼の方を振り向くと嬉しそうに細められた瞳に見つめられ、どうにもむず痒い感覚が走る。初めて気付いた。私は立香のことが嫌いなのではなく、苦手なのだと。
「…あれ、姉さん、固まっちゃった。ごめん、いじわる言って」
暫し思考の海に沈んでいた。ぱちぱち、とあの苦手な視線がぐさぐさとAの身体を刺した。
「はあ？別に気にしてなんかいないわ。そんなことより、早く寝なさい」
「はーい、」
やっぱり、苦手だ。Aははあ、と大袈裟なため息を吐いて自分のベッドへと戻っていった。
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桃苺紅茶＠虹色palette(プロフ) - とっても面白かったです…！ぐだ男くんの小説ってほんとに少ないので…凄く引き込まれるような内容で、何度も繰り返し見てますw更新待ってます！ (2021年9月9日 18時) (
レス) id: 4935a83b89 (このIDを非表示/違反報告)
十朱(プロフ) - 焼きまんじゅうさん» コメントありがとうございます！ぐだ男くん個人的にとっても好きなので夢主とは分けてしまいました笑 (2018年8月19日 19時) (レス) id: 980373f16e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - 待ってました久々の更新……！夢主が居ると同時にぐだが存在する小説は希少価値が高いので、ぜひ終幕まで御付き合いさせて下さい〜♪ (2018年8月19日 19時) (レス) id: 18ac062503 (このIDを非表示/違反報告)
十朱(プロフ) - 夜@依存症さん» コメントありがとうございます！そう言って頂けると本当に嬉しいです。 (2018年1月14日 11時) (レス) id: eb51e53d41 (このIDを非表示/違反報告)
夜@依存症(プロフ) - 文章が流れるように綺麗で、とても読みやすくて面白いです!これからの展開が気になります(*´∀｀*) (2018年1月14日 2時) (レス) id: 88ca4eb684 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十朱 | 作成日時：2017年5月23日 1時
