9.変化�� ページ12
「折れてくれたの、伯母さん。私がどれほど苦しんできたか、分かっていてくれるのはあの人だけだわ」
Aは目を伏せて、まるで物語を読み聞かせるように経緯を話していた口をとうとう閉ざした。立香は薄々勘づいてはいたものの、感情という感情がすっかりなくなってしまったかのような姉の顔を見たことがなかったために、動揺を隠すことは出来なかった。たった１人の姉。立香はあの女を忌み嫌うという点ではAに同胞意識を抱いていたから、ここまで信用されていなかったのか、という悲しみだけが、胸の内を占めた。
「……姉さんは、あの女から逃げるために努力したんだね。僕とは大違いだ」
「そうね。バカみたいにあの女の愛を享受してばかりで何もしない貴方とは、根本的に違うと思うわ」
「…手厳しいね、姉さんは。でも僕は、姉さんと仲良くしたいんだ、今もずっと」
「やめてよ。…そうやって、嘘をつかないで。あの女に愛されて愛されてまっとうに育っているから、」
そんなことが言えるのよ。言い合いのうちに、高ぶった感情が、その言葉を言わせてはくれなかった。立香は、激情のままに言葉を続けることが出来なくなった姉を見て、そろそろ頃合いだとばかりに突飛な言葉を投げかけた。
「ねえ、姉さん。…魔法って信じる？」
否、今現在あるのは魔術だが、と心の中で付け加える。魔法はとうの昔に滅び、神秘を追い求める者たちのための神秘の再現として、魔術が出来た。伯母に仕込んでもらった知識だ。
「はあ？何言って」
「僕の病気の話だよ。不治の病だとかなんとか、言われてただろ。小さい頃の僕は、咳が止まらなくて、だんだん心臓の拍動が弱くなって、寝たきりだった。…姉さんだって、覚えてるよね」
「ええ…それが何？その病気は数年前にすっかり治ったでしょう。お医者さんに奇跡だ〜って言われてね。羨ましいこと」
姉の嫌味は留まることを知らない。これは説得が難航しそうだ、と今は遠くにいるであろう伯母に愚痴を零したくてたまらなくなった。
「それが魔法によって治された。として、貴女は信じる？」
「ど、どうしたって言うのよ…。立香、貴方気が動転してるわ」
「それが嘘じゃないから、姉さんを信じているから、そしてこれからの姉さんに関係のあることだから。今ここでそのことを話す理由はいくらでもあるよ。…伯母さんが、その魔法を使って僕の病気を治してくれたんだ」
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桃苺紅茶＠虹色palette(プロフ) - とっても面白かったです…！ぐだ男くんの小説ってほんとに少ないので…凄く引き込まれるような内容で、何度も繰り返し見てますw更新待ってます！ (2021年9月9日 18時) (
レス) id: 4935a83b89 (このIDを非表示/違反報告)
十朱(プロフ) - 焼きまんじゅうさん» コメントありがとうございます！ぐだ男くん個人的にとっても好きなので夢主とは分けてしまいました笑 (2018年8月19日 19時) (レス) id: 980373f16e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - 待ってました久々の更新……！夢主が居ると同時にぐだが存在する小説は希少価値が高いので、ぜひ終幕まで御付き合いさせて下さい〜♪ (2018年8月19日 19時) (レス) id: 18ac062503 (このIDを非表示/違反報告)
十朱(プロフ) - 夜@依存症さん» コメントありがとうございます！そう言って頂けると本当に嬉しいです。 (2018年1月14日 11時) (レス) id: eb51e53d41 (このIDを非表示/違反報告)
夜@依存症(プロフ) - 文章が流れるように綺麗で、とても読みやすくて面白いです!これからの展開が気になります(*´∀｀*) (2018年1月14日 2時) (レス) id: 88ca4eb684 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十朱 | 作成日時：2017年5月23日 1時
