元気でいろよ。【沖田総悟】

thirty-fourth ページ34

...









沖田くんと別れたあと
俺は先程見かけた男の行方を追うべく
院内のロビーに佇んでいた。




「やぁ、お侍さん。来ると思ったよ。」

「不審な奴を見つけたからな。」




サーモンピンクの髪の靡かせ
砂色の羽織を被る男。

―――春雨の神威




「沖田くんならもう行ったぜ。」

「ふぅん。何も聞いてないけどね。」

「知りたそうな顔してっからな。」




神威の目尻には泣いた跡があった。
血も涙もない、淡白な野郎と思っていたが
どうやら予想とは違うようだ。



沖田くんの名前を出した後に目の前のそいつは手のひらをきつく握った。

血が出るんじゃないかって程、強く強く
悔しさを紛らわすようにしていた。





「お侍さんは何しに来たの？」

「怪我だ、怪我。」

「ふぅん。」



自分から聞いた癖に
興味無さそうに相槌を打つ。



「お前は見舞いか？」

「何言ってんの、怪我だよ。」



お互い嘘をついているのは丸分かりなのに
真意には触れない。

分かち合ってしまったら
全てが終わると、互いが判断したからだ。



後から誰かの声がして
神威は緩慢に目を瞬きさせて呆れたように
下を見た。




「おーい、団長。って、あれ･･･。」

「阿伏兎、お邪魔だね。」

「俺、離れた方がいい？」

「いや、いいよ。」



どうやら神威の春雨第七師団の副団長の
阿伏兎という人だそうだ。

悪党だと言うけれど
先程の対応を見る限り、気がまわる人だ。




「じゃあねお侍さん。せいぜい俺と戦うまでは怪我をしないでよ。」

「あぁ、じゃあな。」



神威は俺にそう告げると去っていった。



しかし数分後
また俺の所に寄ってきて白い封筒を渡した。



「これ、おまわりさんにね。」

「は？」

「いいからいいから、宜しくね。」



宛名、ましてや、一文字も書いていない真っ白な封筒を手渡してきた。


(･･･おまわりさんって、総一郎くんかよ。)




灰色の羽織を靡かせて去る神威の後ろ姿を
見て、俺は先程の誰かさんのように
呆れたように下を見た。







▷▶▷ 神威







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