【第2章:7話 忘れてしまった存在は】 ページ18
カァ、カァ______
黄昏時に、何処からかカラスの鳴き声が支配する。薄暗い貧民街には、3つの人影が伸びていた。
1つは、背の高い赤髪の剣士。
2つは、黄緑の髪の女騎士。
3つは__________
「それにしても、本当にこんな所にいらっしゃるとは思いませんでした______エミリア様」
「それは、私も同じよ」
ラインハルトの言葉にエミリアは
「Aとは合流出来て良かったわ。凄い偶然ね」と笑う。
だが、Aはそれは、本心を隠す為の建前のように思えてならなかった。
もし、先程と同じ展開ならば、徽章を盗られてしまった事の罪悪感があるだろう、と。
「A?どうしたの?」
視線を感じたエミリアが、Aに向けて首を傾げる。だが、
『何でもありませんよ』
静かに首を横に振るのだった。
「そうだ、A。貧民街なんかに何か用だったの?」
『エミリア様と、ある人を捜してまして。スバルっていうんですけど……覚えてませんか?あ、ほら。良く喋る奴です』
「スバル?……知らない、かな。外の人と関わることなんて滅多にないから大抵は覚えてる筈なんだけど」
(……やっぱり、貴方様も「スバル」を忘れるんだ)
微かに表情を陰らせたA。その心情を見透かしてか、エミリアは顔を覗き込んだ
「スバルって、どんな人なの?」
『えっと…よく私をからかって来て苛々するんですけど、見知らぬ他人の探し物を手伝ってくれる…ただの馬鹿男です』
「もう、Aったら…そんなの。馬鹿男なんて言わないわよ。すごーく良い人じゃない。私も "その人に会ってみたいな"」
『……っ』
________スバルとなら、さっきまで一緒にいたじゃないですか。
喉まで込み上げて来た言葉を、寸での所で呑み込んだ。そんな事を言っても、相手を傷つけるだけなのだから。
そんな もどかしさが渦巻いていたからか。
不意に、優しく頭に触れられる温かみを感じて自分を疑った。ラインハルトの大きな手が、ポンポンと軽く叩かれたのだ。
「僕も会ってみたいよ。だから、Aが僕達に、紹介をしてくれると嬉しい」
「ちょっ…その、子供扱いしないで下さい」
ふいっ、と顔を反らすAにラインハルトは苦笑する。
「騎士」という肩書き、抱える悩みも、一瞬にして忘れさせてくれる彼は、そんな魔法でも使えるのか。
「ふふっ、顔赤いわよ?」
「赤くなんかないですよッ!」
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玲紋。 - 面白いです!読んでいて楽しいです!先が気になります。更新、頑張ってくださいね! (2017年2月1日 19時) (レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました!更新遅くなってすみません!なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です!次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁風の夢 | 作成日時:2016年6月3日 21時