3. げきする溺愛 ページ5
***
Aは全然わかってない。
どんだけお前が可愛いのかってこと。
どんだけ俺がお前を好きかってこと。
…それから男にどんな目で見られてるかってこと。
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『え!!すごいですねっ!』
同僚か、…はたまた上司なんか。
知らない男にスマホでゲーム画面を見せてもらって、キャッキャと喜ぶ彼女が視界の端っこで踊る。
……ああもう。またか、って思っちゃう心の狭い俺。
余裕がなさすぎるってのは重々承知だけど仕方ないやん。心配だから。
飲み会の場所聞いて、ちょっと覗きにくるくらい心配なんだから。
「クッソ。あほらし。」
…決してストーカーではない、はず、と心の中で呟きながら虚しくウーロン茶に口を付ける。
きゅるきゅるとした上目遣い。
薄手のニットの袖からちょっとだけ見える指があざといぐらいに可愛い。
狙ってやってんだろ?って思うけど、残念ながらこれが素なんだな。
“ここを狙うと倒せるよ”なんてやって見せる男の腕を掴んで、近寄る彼女は完全に小悪魔だ。
…見せてもらうにしても近すぎ。
距離感なんてなんも考えてない彼女が笑ってるのを見て、ぐっと歯を食いしばってお茶を流し込んで。
ギリギリのところで俺のだって言いたいところをなんとかクールダウンさせた。
酒が入ったAは普段より二割増しで甘えん坊で、無邪気で、距離感が馬鹿になる。
“俺にだけ”なら可愛いで済むけど、“皆に”だからタチが悪い。
誰彼構わずくっついたり、抱き着いたり。
その度に俺の心には黒い感情が渦巻いてく。
“距離、近いって”
“可愛く首傾げんな”
“覗き込むのも禁止”
“無邪気に笑わんで”
ぐるぐると頭ん中を回る、そんな言葉たち。
「あー……すみません。ウーロン茶、追加で」
通り過ぎようとした店員をつかまえて、そう口にするのが精一杯だった。
ヤケ酒したい気持ちをぐっと堪えてんの。
迎えに来たって体で牽制したいからね。つって、マジで余裕ない俺。
…どう考えてもアホだな。
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遊馬(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» 誕生日にUPが間に合ってよかったと一安心しております。おめでたい!!そしていつもご愛読有難うございます…!深夜0時にもかかわらず、一番で評価・お気に入り・コメント頂けてとても嬉しいです。更新はゆっくりになりそうですが今後とも宜しくお願いします(笑) (2020年10月30日 14時) (レス) id: 292e8772db (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 第1評価&お気に入り(多分)はいただきましたっ!!!新作…しかも橙さん……嬉しすぎます!!!お誕生日もおめでたいですね!更新、楽しみにしております!!!!! (2020年10月30日 0時) (レス) id: 294927c63e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊馬 | 作成日時:2020年10月30日 0時