5. たんじょうびの溺愛 ページ8
***
最初はほんの少し。
珍しいなーって思っただけ。
いつも泊まりに来る時は日を跨ぐ前にぽやぽやとし始めて、目を擦りながら“寝よ?”って袖を引っ張ってくるのに。
今日は23時半を過ぎてもそれがなくて、Aは熱心にテレビに向かっていた。
「A、寝んの?」
『んん…これ見てから、ねる』
「そ」
毎週やってる特別感もなんもない番組。
それを好んで見てたことなんて、一回もないはずなのにな…って素朴な疑問。
ちょっとだけ首を傾げてからホットココアを飲んでる彼女の隣に腰を下ろすと、びく!と大袈裟に肩がはね上がった。
『っ!』
「何吃驚しとるん」
『な、なんでもない…デス…』
「嘘こけ」
マグカップをテーブルに置いたのを確認してからぐいと引っ張ると、体勢を崩した彼女が俺の胸に手を突いた。
そのまま抱き締めて腕の中に閉じ込める。
『わっ!?』
「何隠しとるんだコラ〜〜」
『何でもないってば…!』
みるみるうちに赤くなってく頬を撫でるとぎゅっと強く目を瞑った。
……二人っきりって状況でさ。
恋人に抱き締められてその反応すんのは反則やん。
髪を梳かして唇を重ねると、瞑ってた目が大きく見開かれてピタリと固まるA。
くくと笑いを押し殺しながらもう一度“何隠してんの”と問うと、何かを探すように目が泳いだ。
『あ』
そう小さく呟くと、抵抗してたのが嘘のように満面の笑みで擦り寄ってきて。
“てっちゃん、てっちゃん”と俺の名前を繰り返し呼ぶ。
「ん?」
『ふふっ』
「なにぃもう、」
『てっちゃん――誕生日おめでとうっ』
そう言って彼女の唇が頬にあたった。
年を重ねるごとに、誕生日なんてどうでもよくなってくのは至極当然のことで。
ましてや27歳なんて何の節目でもないし。
去年の時みたいに神休みが被っとる訳でもない。
だからなのか、完全に頭から抜け落ちていた。
『…てっちゃん?』
一瞬目が泳いだのは時計を確認したかったからだと思うと、どうしようもないくらい愛おしくて。
「……はー、もう」
『ん、っ』
可愛すぎる、って言葉をぐっと抑えて。
後頭部に手を回し噛みつくように彼女の唇を塞いだ。
くっそ、煽り倒しやがって。
逃がさんからな。
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遊馬(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» 誕生日にUPが間に合ってよかったと一安心しております。おめでたい!!そしていつもご愛読有難うございます…!深夜0時にもかかわらず、一番で評価・お気に入り・コメント頂けてとても嬉しいです。更新はゆっくりになりそうですが今後とも宜しくお願いします(笑) (2020年10月30日 14時) (レス) id: 292e8772db (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 第1評価&お気に入り(多分)はいただきましたっ!!!新作…しかも橙さん……嬉しすぎます!!!お誕生日もおめでたいですね!更新、楽しみにしております!!!!! (2020年10月30日 0時) (レス) id: 294927c63e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊馬 | 作成日時:2020年10月30日 0時