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009号室 ページ10

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「倉庫で、なんかひたすら機械に紙をセットしたり、ダンボールに完成したものをひたすら詰め込んだり、ですかね」

「……ひたすら……」

「でもそんな苦じゃないですよ?むしろ簡単な連続作業なので、無になれるし、慣れればやり方とかもわかって楽になるし」






まさか吉留さんとこうやって食事を共にすることになるとはなあ、と思いながら、さっきからかなりずっと私に対して吉留さんが質問攻めであることにはあえて気を向けないようにする。


気持ち悪さはまったくない。

むしろ真っ直ぐとしたその疑問にはわたしも精一杯真っ直ぐ答えてあげたいという気持ちの方が強い。





「あとは駅前の本屋で働いてます」

「えっ」

「本屋、普段から行かない人ですか?吉留さんは」

「……あんまり行かないかも」

「あら」






ただ、仕事のことや日常生活をどう送っているかなんて、そんな他人のことなのに気になるものだろうか、とちょいとハテナが3つ4つほど浮かんでいる、だけで。






「楽しいですよー本は。読んでると時間忘れられるし。私小学生の頃からずっと本が好きなんです」

「……楽しい、ですか?」

「もちろん」

「仕事も?」

「もちろんです。意外と私、そういうの楽しくないと長く続けられへんタイプで」





心配、というには度が過ぎてるような気もするが、吉留さんは私を何度か見かけたことがある、と前に言っていた。


となると、おそらく『周りのことなんて至極どうでもいい』シャットダウン状態の私をガッツリ見てしまったこともあるんだろう。






「……なんか、ごめんなさい」

「え……?」

「2年もずっとそういう生活をしてきて、自分でも何度も思ったことあるんです。ちゃんと、もっとちゃんとした生活を人として送るべきやし、送った方がいいんやろうなあって」





でも、自分が良ければいいと、自分さえ、自分の体にさえ何も問題がなければいいと、思っていた。






「……親にも、やっぱりずっと心配してかけてもうてるんですかね。関係ないわ、どうせ他人のことやし私が好きでやってるんやから、って、そう思って考えへんようにしてたけど」





そう言ってから最後の一かけらを口に運んでふと吉留さんを見ると、ひどく傷ついたように苦しそうな表情を、机に並べられた空の皿たちに対して向けるように、目を伏せていた。







ああ、そんな顔をさせたいわけじゃないのに。






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lemon(プロフ) - 初めまして!とても素敵な作品でとても続きが気になります!第2章のパスワード教えていただきたいです! (5月7日 13時) (レス) id: 1bc68c94aa (このIDを非表示/違反報告)
ちわわ - 初めまして!もうめちゃくちゃ刺さりました…大好きすぎる作品です…!第2章のパスワードを教えていただいてもよろしいですか…? (2022年6月3日 2時) (レス) id: 8e9e78c35a (このIDを非表示/違反報告)
- 初めまして!とても素敵な作品ですね!続きが気になります!第2章のパスワードを教えていただけますか? (2021年3月26日 17時) (レス) id: ce4eaa6c55 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダマカロン(プロフ) - 第二章と片岡さんのお話のパスワードを教えてもらいたいです! (2020年10月10日 2時) (レス) id: 41c2841ae6 (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - はじめまして!素敵な作品で一気読みしちゃいました(TT)第2章も他の作品も是非読みたいです! (2020年3月6日 1時) (レス) id: 9a92e69ecf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヨムヨム | 作成日時:2019年9月11日 12時

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