【イヤイヤ】中原中也 ページ48
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深夜12時。普段なら確実に寝ている時間だが、俺は眼鏡を掛けて書類と向き合い、眠気覚ましに珈琲を口にしていた。
少し苦めにしたそれは眠気を覚ますには程よく刺激的で、続けてペンを握る。
書類や机と向き合って早2時間、御目当ての其奴は一向に帰ってくる気配がない。多少の腹立たしさを感じながら携帯を確かめるが、連絡もなく無意識にしていた貧乏揺すりが机の珈琲をゆらりと揺らした。
その時、ちょうどドアがガチャリと開く音がした。時刻は12時13分。俺は大きめな溜息を吐くと、眼鏡を外して玄関へ向かった。
リビングの扉をあけて突き当たりにある玄関。そして靴を放り投げて地面に這い蹲るだらしのない女。
「……A、門限過ぎてんぞ」
「………んぁ?…ごめんなさーい!へへ、」
ふにゃふにゃと笑い、頬はほんのり赤く染まっている。目は今にも閉じそうだ。
バラバラになっている靴をきちんと置き、放り投げてあるブランドバッグと脱ぎ捨てられた薄い羽織ものを拾ってフックに掛ける。
「ん、ふふ…あんね、今日ね、わたしすーーーっごい食べたの!おいしかった!」
「へいへい、そりゃよかったな」
酒くせえ。と思いつつ、放って置けないから厄介だ。こうして夜中も眠気を堪えてまでこいつの帰りを待っているのだから。
会社の付き合いで飲み会に行く時は必ずと言っていいほどべろんべろんになって帰ってくるものだから、おちおち寝てもいられない。
「あーーーーー…ねむい………ねる……」
「着替えろよ。あと水も飲め」
へにゃへにゃになって力が入らなくなっている身体をひょいと持ち上げて、ソファーに運ぶ。
着替えのパジャマを持ってきてソファーの背にかけた。水は緩い物を入れてソファーの前の低い机の上に置いておくことにする。
「……………きもちわるい……」
その言葉にいち早く反応し、其奴をトイレまで連れて行った。着くと同時に便器の中にソレを吐き出すと、涙を浮かべて俺を見る。
俺はAの背に手を当てるとぽんぽんとさすって其奴の吐き気が収まるのを待った。
吐き終わった其奴はくったりとしていて、さらに力が抜けているようだった。
「口ゆすげ。な?」
「…んー、や」
「やじゃねえだろ」
頑なにそっぽを向くAに、俺は仕方なく自分の口に生ぬるい水を含むと口を合わせて其奴の口内に水を送った。
その水で口をゆすいで吐き出すと、再び持ち上げてソファーに下ろした。
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紅月天音(プロフ) - 霊夢どうふさん» ありがとうございます!!更新は遅いですが、お話の質は落とさないようにしていきたいと思います! (2018年7月26日 13時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - 芥川さんが多い上に描写がふつくしすぎる!更新頑張って下さい! (2018年7月26日 1時) (レス) id: 8add41b466 (このIDを非表示/違反報告)
紅月天音(プロフ) - ワッさん+aさん» 素敵な感想をありがとうございます!!今後も期待に応えられるようにお話を作れたらいいなと思いますので、よろしくお願いします! (2018年3月31日 12時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - 背景と、主人公の心情の移り変わりがとても細かく書かれていて素敵です!!!! 惚れました!!!!之からも楽しみにしています!!!! 更新頑張って下さい!!! (2018年3月30日 21時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
紅月天音(プロフ) - 紫猫日和さん» 大変長らくお待たせいたしました!すみません、芥川sideは難しくて中々筆が進まず…!ようやく完成いたしました!リクエストありがとうございました!またお気軽にどうぞ! (2018年1月24日 17時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅月天音 | 作成日時:2017年10月16日 17時