【危なっかしい】中原中也 ページ11
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バシャッと言う音とともに冷たい水を頭から被ってしまった。じんわりと冷たさが染み渡り、尻餅をついたお尻が痛い。
まだ秋になりたてとは言え、寒いと言わざるを得ない気温だ。それに加え水もかなりの冷水。
私は小さなくしゃみをした。
「………あらら……」
あたりに散らばるのはひっくり返るバケツと仕事で使う資料。
もちろんびしょ濡れで、後で保管してあるデータをコピーしなければ…と冷静に増えた仕事を頭の中で唱える。
「何してんだ?」
「うぁっ…!?」
びっくりして慌てて振り返ると、上司の中原さんが立っていた。
濡れている書類の事を怒るわけでもなく、ただ心配そうに私を見る中原さんに胸が痛んだ。
どうして私はドジばかり…………。
「中原さん、またドジしちゃって…」
「だろうな。ったく手前の不運ぶりにも流石に呆れるぜ」
中原さんが差し出してくれた手を握ろうとして濡れた自身の手が目に入り、一瞬躊躇う。
幹部である人の手袋を汚すわけには…と。
「すみません…今手が濡れてて…」
「んなこと気にしねえよ、ほら」
濡れた手をぐいっと引かれて立ち上がる。
やはり身体は大部分がびしょ濡れで、服が重くあらゆる部分が水が滴り落ちる。
髪や袖、スカートまで。靴の中もなんだか気持ちが悪い。
「……手前ドジにも程があンだろーが…
新人でもしねーぞ」
流石にいずれ乾くとかそう言うレベルじゃない。
家は近い方だし、一度シャワーを浴びた方がいいだろう。
「書類運んでたら床のバケツ見落としてて……
転んでバケツごとひっくり返りました」
此処にバケツを置きっぱなしにする奴もどうなんだよ……と言いながら中原さんは私の頬に張り付いた髪の毛を優しくどかした。
…………これがモテる男。
床に散らばるゴミ箱行きになるであろう書類を見てため息をつく。
床に膝をついて濡れた書類を一枚ずつ拾っていった。
私と同じくため息をつきながら一緒に書類を拾ってくれている中原さんにじーんと心が温まる。
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紅月天音(プロフ) - 霊夢どうふさん» ありがとうございます!!更新は遅いですが、お話の質は落とさないようにしていきたいと思います! (2018年7月26日 13時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - 芥川さんが多い上に描写がふつくしすぎる!更新頑張って下さい! (2018年7月26日 1時) (レス) id: 8add41b466 (このIDを非表示/違反報告)
紅月天音(プロフ) - ワッさん+aさん» 素敵な感想をありがとうございます!!今後も期待に応えられるようにお話を作れたらいいなと思いますので、よろしくお願いします! (2018年3月31日 12時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - 背景と、主人公の心情の移り変わりがとても細かく書かれていて素敵です!!!! 惚れました!!!!之からも楽しみにしています!!!! 更新頑張って下さい!!! (2018年3月30日 21時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
紅月天音(プロフ) - 紫猫日和さん» 大変長らくお待たせいたしました!すみません、芥川sideは難しくて中々筆が進まず…!ようやく完成いたしました!リクエストありがとうございました!またお気軽にどうぞ! (2018年1月24日 17時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅月天音 | 作成日時:2017年10月16日 17時