【桃色の硝子玉】中原中也 ページ1
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青い空。白い入道雲。
水色にも桃色にも見える硝子玉を指先で回す。
人差し指と親指でその硝子玉を優しく掴み、瞳の前に翳して硝子玉越しの世界を覗き込む。
「それ、なんだよ」
「…これね、」
瞳の前に翳したまま声の聞こえる方に振り向く。
青い硝子玉のような瞳がしっかりと私を捉えていた。
「ラムネの硝子玉だよ。綺麗でしょう?」
「…手前の瞳みたいな桃色だ」
彼は私の瞳と硝子玉を交互に見つめる。
「じゃあこうすれば中也の瞳の色だ。」
摘んでいた人差し指と親指で少し角度を変えると、途端に桃色だった硝子玉が透き通る空色に変化する。
「ね、珍しいでしょ。角度によって色が変わるの、この硝子玉。」
「俺は手前の瞳の方が好きだ。」
黒い手袋がつけられた手で引き寄せられた。
心なしか少し拗ねているように見える。
「ごめんね、ここにとっておきの硝子玉あったや。」
そう言って彼の瞼にキスを一つ落とした。
中也は人差し指で軽く硝子玉に触れると、パリンッと割れてしまった。
「あーあ…結構気に入ってたのに。
硝子玉に嫉妬しちゃうなんてね」
「うるせェな。…俺はもう車に戻るぞ」
「もう、車出すから海を見に行こうって言ったのは中也だよ?子供じゃないんだから拗ねないでよ」
中也の顔から硝子玉に視線を向ける。
数個に別れてしまった硝子玉は夏の太陽に反射してキラキラと輝いていた。
「あ。」
「あ?」
中也も硝子玉に目を向けた。
「見て、綺麗。」
桃色にも、水色にも、そして混ざり合った薄い紫色にも見えるそれがとても輝いて見える。
小さな貝殻を入れようと思っていた小さい瓶に割れた硝子玉を詰める。
小さな瓶に詰められたそれを太陽に翳した。
「私と中也の色だ。前よりずっと好き。
…まさか、また壊したりする?」
「……別に、割らねェよ」
俺とお前の色だ、そう言って私の唇に優しいキスをした。
2人で空を見上げると、太陽がキラキラ私たちを照らしていた。
不意に涼しい風が吹く。白いワンピースが靡いた。風に飛ばされないように麦わら帽子を抑えると、中也の手袋を外して手を繋いだ。
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紅月天音(プロフ) - 霊夢どうふさん» ありがとうございます!!更新は遅いですが、お話の質は落とさないようにしていきたいと思います! (2018年7月26日 13時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - 芥川さんが多い上に描写がふつくしすぎる!更新頑張って下さい! (2018年7月26日 1時) (レス) id: 8add41b466 (このIDを非表示/違反報告)
紅月天音(プロフ) - ワッさん+aさん» 素敵な感想をありがとうございます!!今後も期待に応えられるようにお話を作れたらいいなと思いますので、よろしくお願いします! (2018年3月31日 12時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - 背景と、主人公の心情の移り変わりがとても細かく書かれていて素敵です!!!! 惚れました!!!!之からも楽しみにしています!!!! 更新頑張って下さい!!! (2018年3月30日 21時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
紅月天音(プロフ) - 紫猫日和さん» 大変長らくお待たせいたしました!すみません、芥川sideは難しくて中々筆が進まず…!ようやく完成いたしました!リクエストありがとうございました!またお気軽にどうぞ! (2018年1月24日 17時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅月天音 | 作成日時:2017年10月16日 17時