【歌い手】誰そ彼時＊彼は誰時【たぬき】 (ページ4)

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夏期講習ページ4

悪夢の期末が終わって間もなく夏休みにはいった

補習組と希望者の受ける夏期講習がすぐにはじまって教室には３分の１ほどの生徒が高めの冷房設定に愚痴を漏らしながらノートで風を扇いでみたり、

その生徒らの視線がたまに刺さるように感じられ気のせい気のせい気のせいだと持参した参考書に食い入るように顔を伏せた

「Aさー雰囲気かわったよね？」

前の席に腰掛けくるりと振り替えってこっちを見てたのは小中同じの坂田くん

誰とでも話せるフレンドリーな彼はくりくりと黒目を輝かせて直視してきた

「そんなこと‥」

スカート丈はまだ長めとはいえ今までの丈よりはるかに短いし

三つ編みにしばってた髪だって今朝がたメールで浦田くん禁止されて否応なく左右に縛ったのみ

いつもかからない首もとに髪の毛がふわふわ当たってくすぐったい

一番自覚してるのは浦田くんに手を引かれて連れていかれた眼科

眼鏡を新調したのは中学生の頃だったからかれこれ3年は使ってた愛着ある相棒だった眼鏡に突然の禁止令。

慣れないコンタクトと朝から格闘して今に至る

レンズ越しに見たいものだけを覗いてきていた世界から隔てるものがなくなって広がった視野(せかい)

クリアに見える坂田くんは満面の笑みで

「コンタクト(そっち)のが可愛い」

ストレートな坂田くんの言葉に耳まで熱が込み上げたのが秒でわかった

ぎこちなくもお礼を返して夏期講習1限目のチャイムに救われた

突然の変貌にクラスメートだけじゃなくて家族だって気付くわけで

気難しい父はちらりと横目で見ただけで自室にこもってしまって顔を合わせてないからどう思ってるのかわからないけど母は何気に喜んでた

やっと女の子としての自覚が～なんて。

お昼休みは浦田くんに呼び出されていたので屋上にいかなきゃ‥

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