翼の剣士【うたわれるもの✕鬼滅】 (ページ14)

今日:9 hit、昨日:36 hit、合計:2,522 hit

怯えの理由ページ14

その大猪には確かに頭に傷があった。
しかし…

『……トキトウ殿、あの猪の傷なのですが…
あれだけの傷を着けれる生き物はこちらに存在していますか？』

その傷はまるでそれなりの体躯の生き物に鋭い爪で引っ掻かれた様な傷。

無一郎「…この辺にはいないんじゃないかな…オウカは心当たりが？」

横目で私を見ながらも大猪からは決して目を離さないトキトウ殿。
この大猪には確かに民も怯えるだろうが…

『私の世界には「ガウンジ」と言う大きな角と鋭い爪のある生き物がおりますが…こちらにはいないのではないかと…』

ガウンジが暴れているならかなり騒がれている筈、それだけ危険で凶暴な生き物なのだから。
そしてガウンジと相対したならばこの大猪はこの程度の傷では済まないはずだ。

無一郎「ならそれ以外の何かー……！」
『まさか、オニ…！？』

どうやら同じ結論に至った様だ。
オニであれば確かに鋭い爪もあり、人と体躯も似ている。
テオニとやらは異形のオニだったそうだけれど、オニの身体能力は高く、簡単に人を殺める事が出来る。
確かにタンジロウと共に戦った時に少し驚いた記憶がある。
人と似た姿でありながらその身体能力には驚いたし、素手かと思えば爪が武器だったり…
この大猪もオニに遭遇してなんとか逃げ切った…のだろうか？
そうであれば人をしつこく追い回したり怯えるのは解るような気がする。

『しかし…このまま放置も出来ませんし、何より良き獲物…！！』

隣でガクッとトキトウ殿が傾いた気がするが…カンロジ殿達はきっと喜んでくれるだろうし、何より民も安心して山に入れる様になる！
オニは後で対処し、今はこの大猪を！！

『苦しまぬ様に一思いに葬ってやる、さあ鍋がいいか串焼きがいいか…！！』

無一郎「…食い意地張ってるよね、オウカ…！？」

トキトウ殿が話し終える前に姿勢を低くし、地を蹴り大猪に一気に近づく。
そして大猪の首を刀で斬り落とした。
崩れ落ちる大猪、そして私は何事も無かったかの様に刀を布で拭き、鞘に納める。

無一郎(…速かった、凄く…呼吸を使っていないのに…これで呼吸を使えたら…)

『さーてさてさて！捌いて持ち帰りましょうトキトウ殿！
先程の少女は麓に居を構えていましたね、帰りに少しおすそ分けしましょうか！』

にこにこ笑いながら話し、更に解体していくオウカに無一郎はある意味戦慄を覚えるのだった…

無一郎(…ちょっと、普通じゃないよね…でも、嫌いじゃない…)