８７． ページ38
「俺が情報を持ってる限り、グルッペン、お前は自由になれないんだ」
「…………」
唇を噛む。成瀬は少し、焦っているようにみえた。いつものような飄々とした感じはすっかりなりをひそめ、怒りに歪んだ顔で俺たちをにらんでいる。
……本当は、こんなことはしたくない。
だが、するしかない。こうするよりほかに、方法がない。グルッペンのことを解放し、自分の身を守るためには、もうこうする以外にないのだ。
プライドなんか捨ててやる。自分の身を守るためなら……そしてなにより、グルッペンのためなら。
「…………っ！？」
──俺は勢いよく、地面に頭をついて土下座した。
「頼む、この通りだ！ 俺はこいつが好きで、こいつも俺が好きだ！ お前が俺のことをどうにだってできることはわかってる。でも、頼むからやめてくれないか……。お前がこいつのこと、本気で好きなのもわかってる。でも俺たちも……本気なんだ。だから、頼むから身を引いてくれ……」
「……そ、そんなことされたって……」
「な、成瀬っ」
そう叫んで、グルッペンも同じように土下座した。おおげさにいっておきながら、俺にはもともと、プライドと呼べるようなものはろくにない。だがこいつは違う。勝ち気で強気で、それなりにプライドのあるこいつが、俺にならって土下座をするのは、簡単なことではなかっただろう。
でも、こいつはそれをしたのだ。俺のために。……俺たちのために。
「頼む……、この通りだ。俺からもお願いする。お前の気持ちがうれしくないわけじゃない。でも、俺は絶対、お前の気持ちにこたえられない……。だから……わかってくれ……」
そう告げるグルッペンは苦しそうで、成瀬に対して断りを入れることに、申しわけなさを感じているのだろうということが如実に伝わってくる声をしていた。この期に及んでもそういうやさしさを捨てないで抱きつづけることができるグルッペンのことを、強いなと思う。一見してクールでドライだが、本気の相手には、同じだけの本気でこたえようとする誠意が、こいつにはある。だから俺はこいつに惚れたんだ。
……だが、成瀬の反応は芳しくなかった。
「……許せない……」
成瀬が小さく、そうつぶやく。思わず冷や汗が流れた。顔を上げて成瀬をみる。歯を食いしばって、怒りの表情を浮かべる成瀬を、俺もグルッペンも、苦々しい気持ちでみていた。
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エス(プロフ) - あわさん» すごくうれしいですありがとうございます……！文だけでなく、grpn以外のキャラクター、オリキャラたちまでお褒めいただいてすごくありがたいです。私が書き出したかった青春の空気感が伝わったようで、すごくうれしいです。ありがとうございます！ (2019年10月31日 20時) (
レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - 腐女神だぜ☆さん» うれしいご感想ありがとうございます！書きたいものを書きたいように書いた作品でそういっていただけるのはなによりの励みです！読んでくださってありがとうございました！ (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - スラカさん» ご感想ありがとうございます！！書き手の私の「grpnかわいい〜」という気持ちがあまさず伝わったようでうれしいです笑 読んでいただいてありがとうございます！ (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - るーかさん» ご感想ありがとうございます！そうですね、そういうことへのきっかけにもなれていたらこれ以上はないです！同性愛のテーマも案外普遍的で、どこにでもあるんだよということが伝わっていたらうれしいです。ありがとうございます！ (2019年10月31日 19時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - 倉の中の石さん» すごくありがたいご感想ありがとうございます！その気持ちが一回ぶん以上の評価として私の胸に届きました……！ありがとうございます！のたうちまわらせることができて狙い通りって感じです……（へへ…）ありがとうございます！ (2019年10月31日 19時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エス | 作成日時：2019年10月21日 23時
