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俺らの拙い話にも目を見て伺ってくれるAさんは緩やかで、その会話を少し嬉しそうに眺める拓海の物腰の柔らかさとどこか似ていた。
暫くで暇を告げた彼女は丁寧に会釈をし、また、と微笑む。
突飛な出会いがない俺らにとっては最早夢心地で、彼女が拓海の服を引き耳元で唇が触れてしまいそうな距離のまま何やら話していても、理解が未だ追い付かなかった。
自身の車へ戻りシートに腰を下ろし、拓海を見上げて頭を撫でられ幸せそうに笑う幼気な姿。
幾ばくかで聞こえるエキゾーストノートとのギャップは余りに強く戻ってきた拓海にそのまま引き下がれそうもなかった。
あんなお嬢様みたいな可愛い子を拓海は…好き放題…と愕然とするイツキに、面倒そうな顔を隠しもしない拓海が軽くあしらう。
「Aさんと、ど…ッッどんなことしてんだよぉ〜〜!!あんなきゅっと締まったくびれに片手では足りない程豊満なアレをお前…ッくぅ…ッッお前は、もッッ」
「Aさんがなんだって…?」
レッドサンズがその名を走り屋界に上げ始めてからまことしやかに伝聞されてきた美少女だ。
実際に間近で見れば今を時めくアイドルに引けを取らないどころか上回ってしまうのではないかと思う容姿に、そんな美麗なスタイルがギャップを引き起こす朗らかな笑顔。
イツキのテンションが絶好調になるのもわかるのだが。
「わーーッッ!!冗談!!冗談だって拓海!!お前目が怖ぇよォ!!」
ガッッ、と拓海の手が豪速でイツキの頬を下から掴み上げ睨みを効かせるものだから、健二がはっとして口を押えていた。二の舞になるところだったらしい。
帰りの車中、俺ァあんな美女にハグされた日にゃ泣いちまうぜ…と頭を抱える健二に賛同しつつ、イツキの運転を見守る為留守番をしていたハチロクに戻る拓海に今日の礼とこれからの予定を伺う。
少し迷った末、小さな声が彼女と落ち合う旨を告げた。
「も、もしかして今から、ほ、ほて、ほ、ほ、Aさんといち、いちいちいち熱いいちや、」
「落ち着けイツキ、藪蛇なことを言ってはいけません。」
「くぅ……池谷さんが急に大人に…ッッ」
イツキの口を覆う俺にほっとした様に笑んだ拓海が頭を下げ、夜闇に消えていく。
見送った俺が羨ましいと呟いてしまえば少しの成長を戻してしまうだろうから、静かに飲み込んだ。
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み(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» お楽しみ頂けた様で嬉しいです〜〜!!ありがとうございます😊❤😍✨ (3月12日 7時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - やばい!!!!やばいです😭😭😭拓海いぃぃぃぃぃいいいい好きだァァァァァ (3月11日 4時) (レス) @page41 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - るさん» こちらこそお褒めの言葉ありがとうございます😊💕💕もっと楽しんで頂けますよう更新頑張ります! (11月24日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
る - 最高すぎます。本当にありがとうございます😭😭😭😭😭更新楽しみにしてます🥰 (11月23日 8時) (レス) id: 74e8a14f0e (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - わんさん» いにで大好きなのですが余りに供給が少なくついに手を出してしまいました…!お読み下さりありがとうございます💕これからもお楽しみ頂けるよう頑張ります! (11月22日 16時) (レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:み | 作成日時:2023年9月29日 15時