参・妖月探偵事務所【名前変換オリジナル】 (ページ16)

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５７話【人間の欲】ページ16

「……」

「…っあ、すみませ……っ」

一度言ったことを無かったことにするなんてこと
できるはずもなく、自分の言ったことの重大さに気付いたとしても
このどうしよもなく思い空気を軽くするなんて無理だろう。
どうして私はこうしっかり考えて発言ができないのだろうか、
そう自分を攻めていたとき、ゆたゆきさんが口を開いた。

「…未練。」

「ゆたゆき」

「いいからいいから。早かれ遅かれ知ることになるんだから、ね？」

「……」

さっきの暗い表情は消え、また笑顔に戻っているゆたゆきさん。
本当はそんな明るい顔でいられるはずがないのに
無理させてしまっていると思うと申し訳なくて心が酷く痛んだ。

口に出すのも嫌なことを態々説明させてしまう。一瞬止めようかとも
思ったけれど、言おうとしてくれているのを制すのはもっと失礼な気がして、
真剣に聞こうと止めようとしたときに開いたままだった口を閉じた。

「僕はみたいな、生まれから妖怪だったって訳じゃない妖怪は
基本的になにか強い未練を残して死んでいってる。それも憎悪とか、
嫌悪とか、そういう悪い感情ばかり。同時に、その未練はほとんど
果たすことは不可能なものばかりで成仏できた妖怪はいても、
未練を果たせたのは誰もいない、と思う。」

「そんな…」

そんなの苦しむために妖怪へと変わったのと
何ら変わらないじゃないか。ずっと抱えている未練を果たせず、
ただただ負の感情を持ってこの世界をさ迷い、
そのまま成仏させられるなんて、そんなこと……

ゆたゆきさんは俯いてしまい話せるような状況じゃなさそうだった。
辛い顔をしていた先輩が表情から私の思っていることを汲み取ったのか
ゆたゆきさんの変わりに話始めた。

「仕方のないことなんだ…
人間と、妖怪の関係を保つためには、ね」

「関係…？」

「長い話になっちゃうけど……
祓い師のことは話したね。」

「っ……」

「は、はい」

祓い師という言葉に反応したのかピクリと肩をゆらした
ゆたゆきさん。私はなにかわからないので先輩の問いに
返事をするしかできない。そして、先輩は一度深呼吸を
してから話はじめた。