参・妖月探偵事務所【名前変換オリジナル】 (ページ12)

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５３話【とうはの生前】ページ12

「気持ちはわかるし申し訳ないけど、ここは我慢してくれないかな…？」

「あ、いえ…すみません、カッとなっちゃってそのまま…」

「ううん。そうなっちゃうのは仕方がないだろうから。
それに謝らないといけないのはこっちの方だよ、とうはがごめんね」

苦笑しながらとうはさんの変わりに謝ってくれたし、
私が言葉が出そうだったのを止めてくれたので
首を横に振って大丈夫だと伝えようとしたら
しっかり受け取ってくれたらしく、安心したような顔で
ありがとう、と言った。

「……」

「てら」

「…ん」

とうはさんは横目でこちらを見ていたけれど、
とばみさんに言葉で背中を押されて外に出ていっていた。
地面は雪が雨を含んで進みづらいと思うので
空を飛べないとうはさんじゃやりづらいんじゃ…

そう思いながら窓を見たけれど、外には誰の姿もないし
空も灰色の雲が広がっているだけだ。いくらなんでも
この一瞬で見えなくなるくらいまで遠くへ行くのは
不可能に近い。いったい何処に居るのかと外を
キョロキョロとしていると私の近くにいたゆたゆきさんが
話しかけてきた。

「とーくん探してるのぉー？」

「とーくん…？あ、そう。とうはさん。
どうやっていってるんだろうなって思って…」

ゆたゆきさんやひなさんの使っているあだ名は
始め聞くと誰が誰だかわからなくなったりする。
少し考えたらわかるのでまだいいんだけれど。

ゆたゆきさんは私の返答にやっぱり、
と言うように口角を上げてこんこんと壁を叩いた。
もとろんどういう意味か私にはわからず首を傾げると
仕方ないなぁと言いながら突然窓を開いて
顔を外へつきだし、上や横を見てから私にも見るように言ってきた。

奥からはなよいさんの怒鳴り声が聞こえてきたのは
無視した方がいいんだろう。

「だからどこにも…。っ？！」

「んふふ、忍者みたいだよねーとーくん」

ゆたゆきさんと同じ場所を見ると、
そこには建物の壁に片手をつけてぶら下がり、
反動をつけて少し遠くへまた片手をつけてを繰り返して
移動しているとうはさんがいた。