２７話【 ほ ん とは い い や つ 】 ページ10
帰ろうと玄関に向かうと、しゅさがさんに呼
び止められどうしたのかと聞いた。けれど口
をもごもごとさせるだけで言葉を発してはいない。
それから数秒沈黙が続き、流石に耐え難くな
ってきたのでもう一度こちらからどうしたの
かと聞こうとしたとき、バンッ！！といい音
がし、ほぼ同時にいって！としゅさがさんが
叫んだ。
どうやらいつの間にかしゅさがさんのすぐ後
ろまで来ていたゆたゆきさんに背中を叩かれ
たらしく、初めの音は叩いた音なんだろう。
「なぁーにしてんのさー。
琴乃ちゃんだって暇じゃないんだから
早く言っちゃいなよ男らしくないなぁ」
「うるせーな！！そんな簡単に言えるかよ！！」
「プライド高いやつは女に嫌われるぞー」
「な………っ」
好きな人でもいるのか、女に嫌われるという
言葉にそうとうショックを受けたらしい。
ふとゆたゆきさんと目が合うと、苦笑しなが
ら口パクでごめんね、と言われ、こちらもつ
られて苦笑しながら首を横に振った。
「あ、ああのさ！！！」
「は、はいっ？！」
突然大声で話され体が跳ね、ゆたゆきさんに
吹き出されていたけれど気にせず、しっかり
としゅさがさんの方を向いて次の言葉を待った。
「その…あの……わ、悪かったな。
噛みつこうとして………」
「…え、い、いやいや別に気にしてないですよ……？」
「お前が気にしてなくても俺がダメなんだよ！！
主様にも誰にでも優しくしろって言われてたから………」
「………」
正直そのあとに起きた事件の方がずっと印象
的で、噛みつかれそうになったことは記憶の
隅で消えかかっていた。もちろん驚きはした
けれど、ゆたゆきさんとはなよいさんが守っ
てくれたから傷は全くないし、警戒されてた
り嫌われてたりしていることは分かっていた
ので気にしていられないと自分で解決させていた。
それにしても、やはり先輩の妖怪からの信頼
は凄い。きっとここの妖怪はみんな先輩のこ
とを信用したり頼っていたりするけれど、私
への態度を見ると結構人が嫌いなはず。それ
をここまで信用されるのは凄い時間がかかり
そうだし、下手したら途中で死ぬんじゃない
かとも思えてくる。
ここの人間は先輩一人だというから、やっぱ
り本当に凄い人なんだなと改めて思った。
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作者名：ひいら | 作成日時：2019年1月24日 23時
