妖月探偵事務所【名前変換オリジナル】 (ページ11)

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１０【一難ありそうです】ページ11

「と、言うことで。この子が今日から新しく働いてくれることになった
糸印Aさん。みんな仲良くしてあげてね」

先輩がそう言う。しかし誰も反応せず、静寂が続いている。それに加えて空気はとても重く、できるものならすぐにでも別の場所へと逃げてしまいたい。

「…………」

「……はぁ…」

これほどまでに耐え難く、奇妙な光景なんてあるだろうか。隣には先輩、そして目の前にはたくさんの妖怪。しかも全員私の事を睨むか全く別の方向を見ている、なんていう状況以上のものが。先輩もため息をついてしまうほど結構困っている様子。

こうなった経緯を説明すると、先程事務員として働くことになったので、ちょうど来ていた依頼の話が済んでから働いている人(妖怪)を全員集めて紹介しようという話になった。けれど、私が人間だということもありとてつもなく警戒されているらしい。

そろそろキツくなってきた沈黙を破ったのは、
ある女性妖怪だった。

「月様、こんな小娘を入れるとは正気ですか……」

「こむ………っ」

「はなよい、この子は君達が見える。
少し不満なのもわからなくはないけれど、
君達ばかりに仕事を任せるのは申し訳ないんだ。」

「ですが人などではなく……っ！！」

「妖怪にはできなくて、人にはできることだってあるよ」

「！！」

「それに、話し合いの人数が増えれば
今よりも早くできるかもしれない。違うかな」

「っ………」

はなよいと呼ばれた妖怪は、言葉を詰まらせて俯き、拳を固く握っていた。それほどまでに人間を嫌う理由は分からないけれど、今更やっぱり辞めますなんてことを言う気は全くない。

まだ少しばかり恐怖心は残っているものの容姿の怖い人は誰もおらず、早めに慣れることができそうなのであとは向こうが心を開いてくれるのを待つだけだ。