今宵、君と (ページ5)

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次の日、また重たい身体を起こす。もしあれが夢でないのであれば今日、あの人は迎えに来る。しかし、あの後どうなったかはよく覚えていない。だからあまり期待をしない。

A｢今日何するんだっけ｣

そんなことボヤいていたら母親が入ってきた。

母｢A、今日から一ノ瀬家を出るまであまり家を出ないで。もし何かあって婚約破棄なんてことになったらたまったもんじゃないわ｣

そう言うと私の部屋を後にした。とうとう行動まで制限されたのか。もうどうでもいいけど。そんなことを思いながら私好みの黒の着物に袖を通し、髪も纏めずに流す。

A｢やっぱりこっちの方が落ち着く｣

沖田｢俺もそう思いますぜ｣

急に声が聞こえドアの方を見ると沖田さんが寄っかかっている。

A｢いつからいらっしゃったの？｣

沖田｢え？A様の着替える最初かr…A｢変態｣

沖田｢何言ってんでさァ。スタイルいいんだから見せない方が勿体ないですよ｣

沖田さんってこんな変態だったっけ？なんかガッカリ。そういえば、

A｢今日はなんでいらっしゃるんですか？｣

沖田｢あー、A様が外に出ないよう見張れと命令されたもんで。まぁサボれるから俺的にはラッキーですがねィ｣

そういい私の部屋にズカズカと踏み込み寝っ転がる。この人とことん仕事向いてないな。

A｢ねぇ、沖田さん。もし私が一夜にして姿を消したらみんなどんな反応なんでしょう｣

沖田｢少なからずA様の御両親は"悲しむ"と言うより、"焦る"でしょうねィ。俺は悲しみますが｣

A｢ふふ、沖田さん悲しんでくれるの？｣

沖田｢そりゃ、とっておきのサボり場所がなくなるんでさァ。困っちまいますよ｣

A｢"私"じゃなくて"サボり場所"って酷くない？｣

沖田｢あーはいはい｣

テキトーな返事をして沖田さんは自分のイヤホンを耳につけ、落語を聴き始めた。
確かに、私が消えたら一ノ瀬家は西園寺家に嫁げなくなり、"娘の監理不足"として親は一族の大恥になるんだろうな。救いなのは沖田さんが私の状況下と心情を分かっててくれてるだけでも幸せなのだから、昨日のことは一夜の夢として綺麗さっぱり忘れよう。