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花の街の鬼 ページ4

─時は僅かに遡り 京士たちがたどり着く前日の夜。
 

 
 



ことり。
髪を結いあげていた(かんざし)(くし)を丁寧に並べる。
この街の、このお店の“姫”として、様々な女たちの上に座す花魁(おいらん)として生きることは(わたくし)にとってはあまりにも窮屈だ。

「殿方との交流の絶えない街と聞いたから…この街に来たのに…
…こんなの聞いてません……」

幾重にも重ねた着物を脱いではたと気付く。
ああ、わざわざ人の術で衣を変えずとも、変化(へんげ)をただ解けば良いだけなのであった。
外してしまった簪と櫛の説明は如何にしよう。
思案に耽っていると、まだ息のあった人間が簪のひとつを取ろうと血塗れの体を引きずりにじり寄る音が聞こえた。

「あぁ…いけません、いけません…そのようなことをされては、(わたくし)…」

先程解いたばかりの髪がざわざわと逆立つように震える。
そしてその次の瞬間には、その髪は異常なまでに伸び、その人間の体を縛りつけていた。

「……(たかぶ)ってしまいます……!」


口の端から漏れる高揚しきった、少し掠れた笑い声と、縛り付けられた男の悲鳴が夜月に響く。

…この店に留まるのも潮時でしょう、あまりにもここは窮屈だった。
以前よりこの街には鬼が出ると噂が絶えなかった訳ですから、この夜にこの店に入り込んでしまった、そして私は“偶然”その鬼から逃れた。…そういうことにしましょう。
いや…変化する形を変えれば良いだけでは…?やることが山積している…
ただ殿方と交わり、数多の人間を侍らせてゆくだけなら楽だけれど、無惨様のために青い彼岸花のことを聞いたり、陽の光への耐力についても考えなければ……

「考え事をしていたらおなかがくうくう泣いてしまいました。」

髪で捕らえていた男を、時間があまりないのでお行儀なんて構わずに貪る。やはり若い殿方の血肉は格別だ。
全て貪り尽くした頃には、外は白み始めており、陽の光が近寄っていた。

「ああ…どうしましょう……全員食べてしまっていたら…こんな時間に……」


あたふたとしていると、襖が洋館の扉に変わり、開かれた先から“おいで”と手招きをされる。

「肆様…!ただ今、そちらに伺います…!」

ぱたぱたと扉の先へと駆け込み、扉が閉まる瞬間に窓辺に太陽の光が差し込むのが視界の端に映った。


そうして残ったのは、骨と少しの肉だけを残して屍となった人々と血塗れの店だけとなった。

二日目 昼→←同行-雷



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作者名:時坂豆腐 | 作成日時:2021年8月18日 22時

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