同行-雷 ページ3
「……なあ鳴柱ぁ」
「言いたいことはわかるけど、鬼を見つけるまでは我慢してほしいな」
「…あんたの弟、鬼より鬼だわ…」
「それはわかるかなー…」
鳴柱と共に花の街の日陰道を歩く。
元々長い髪を藤鳴の鈴の付いた髪紐で結いなおして、化粧をしてもらって、女の子の格好をして任務にあたる。
最初聞いた時は、炎柱から聞かされたということもあり全力で拒否をした。めちゃくちゃ拒否した。
嫌だよ任務のためとはいえ、年頃の男なのに女の子の格好しなきゃなんて。
炎柱、ずるいよな、抗議中に交代しちゃうんだもん。
なんて、何も知らなくて炎柱のことは反抗期の弟って思い込んじゃってる鳴柱には言えなくて、ただ頬を膨らませる。
「そういえば京士くんって鬼なのに呼吸が使えるんだっけ?」
「そう!いやー、俺も最初使えた時は超びっくりした、使えても血鬼術くらいだと思ってたし。」
「逆に血鬼術は使えないんだ、例の病院の鬼も使えるらしいのに」
「…痛いとこ突かないでくれよぉ……」
血鬼術ってどう使うんだ。本当に。
Aはゆっくり考えりゃいいって言ってたけど…館でのこともある。
のんびりなんてしてらんない。早く、早く強くなってあの真っ青な上弦の鬼をコテンパンにしてやらなくちゃならない。
…でもほんとに分からないから、この任務を終わらせたら
「ついたよ、ここが花の街で一番大きなお店。京士く…ええと」
「…
「ごめんって。京子はここで働く…ということで潜入調査。あとで別の時に実里くんも来るはずだから。それまで頑張って。」
「それまでに出くわしたら?」
「鴉に指示出して、昼間だったら相手も大きく動かないはずだから表に出るように動いて。」
やがてお店の人が表に出てくると、丁寧に挨拶をしてから“京子”としての俺を紹介していく。
お店の人のおばさんは目を皿にしてじろじろと俺を見たあと、お入り。と言ってお店に戻っていった。
「それじゃあ、頑張って。俺も色々聞き込んでくる。」
「任せとけって!」
正直、鬼より男ってバレた時の方が数倍怖いけれど、強い強い鬼がこの街に紛れているんだと思い返して、嫌々言ってらんないな。
いつもよりも背筋をぴんと伸ばして、お店の人について店へと入っていった。
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作者名:時坂豆腐 | 作成日時:2021年8月18日 22時