第107話 Curry ページ11
*
貴「たいやき君は自分で選択して海に行った
後悔はしてないんじゃないかな」
あの有名なたいやき君の歌には諸説意味があるが、私はそう思いたかったからそう思うことにした。
受け取り方感じ方は人それぞれだ。
こういうのはそう思ったモン勝ち。
万次郎の大きな瞳が私を映す。
ゆらゆらと揺れる黒目を静かに見つめた。
万「一瞬の幸せなら知らない方がいいんじゃねぇの
死んだ時惨めになる」
貴「けど後悔せずに生きたいでしょ？」
万「それはそうだけど」
貴「じゃあ万次郎は今何したい？」
万「……俺、」
どちらからともなくお互いから視線を外し、また遠くを眺めながら万次郎の次の言葉を静かに待つ。波音と船の汽笛の音だけが響く空間は居心地が良い。
それから小一時間は経っただろうか。
万「よし、決めた」
万次郎の金色の髪が軽やかになびかせながら何かを決意した顔でそう呟いた。
私の顔を見るやいなや手を取って立ち上がらせる。
手を握りあって向かい合うと真剣な顔をして言った。
万「オレさ、Aに幸せになってもらわねぇと
シンイチローにも場地にもエマにも怒られる」
貴「ふはっ、何それ」
万「だから幸せになれよ」
貴「……私はみんなが幸せならそれでいいよ」
万「Aはいっつもそうだなー
もっとワガママ言えよ」
お兄ちゃんが聞いてやるぞ？とはにかみながら私の手を離し、軽々しく堤防から飛び降りる。
ワガママ……我儘かぁ。万次郎やエマのそれを聞くのが専ら私の役目だったので、確かに自分で言う事はあまり無い。
少し考えるとなんてことない我儘がふと1つだけ浮かび上がった。
貴「……辛いカレーが食べたい」
万「は？」
貴「私の今のワガママ
辛いカレーが食べたいなぁって」
万「…………ヤダ」
貴「あれ、話が違う」
万「それとこれとは話が別！」
貴「ヨシ、今日の晩ご飯は辛いカレーで決定
ドラケンとタカ呼ぼうかな〜」
万次郎はお子様舌で辛い物が苦手だから我が家の食卓は甘口のカレーしか並ばない。長年食べると少しだけ飽きが来るもんだ。
ぷくと頬を膨らませながら私を睨みつける兄。万次郎のは別の作ってあげるからと笑いながら言うと、なら良いと機嫌が戻った。
万「ケンチン来るって」
貴「連絡はや」
無理も承知でタカに連絡をすれば"行く"と嬉しい返事が来た。運良く今日はお母さんがお休みだったらしい。
カレーパーティに胸を馳せながら帰宅した。
*
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てる。 - 初コメ失礼しました！最初は恋愛系かな？？と思っていて読んでいたらバリバリの感動系で深夜に声を上げて泣いてしまいました(T ^ T) (2023年4月11日 0時) (
レス) @page3 id: 01aa01ae14 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 更新楽しみに待ってます。泣 (2022年11月20日 22時) (レス) @page31 id: e007552609 (このIDを非表示/違反報告)
はむはむ(プロフ) - 更新楽しみにしております。 (2022年11月16日 12時) (レス) @page31 id: 9534e4617e (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐 - この小説大好きですっ！！もうめちゃくちゃ感動できます！！更新楽しみにしてまーす！ (2022年5月25日 19時) (レス) @page31 id: 8d5c2ab10a (このIDを非表示/違反報告)
no_(プロフ) - この作品がとても大好きです。更新されるまで待ってます。 (2022年5月15日 17時) (レス) id: c80cd65ba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あたた | 作成日時：2021年9月25日 18時
