5話 ページ7
あのままあそこに居続けるのは良くないと、ひとまず路地裏から出ようと言う彼の言葉に頷いて彼の手を借りて立ち上がる
「...あ、私の鞄」
「あぁ...これ？」
ここに連れて来られるまでの間に何処かへ落とした鞄を彼は持っていた
「...ん」
「ありがとう、ございます」
鞄を受け取り、私が来た道を戻っていく彼の後ろを急いで追った
「あの、お礼を...させてくれませんかっ」
「いらない」
冷たく、突き放すような言い方だった
まるでこれ以上関わりたくないと言われているように
それから何も言えなくて、気まずい雰囲気の中歩き続けて人通りのある場所まで出たあと、タクシーを直ぐに呼んだ
何分か待つと、目の前に一台のタクシーが止まる
「...本当に、ありがとうございました
あの、パーカー...」
「... ...それ、捨てていいから」
直ぐにでもこの場から離れたいのか、私に背を向けて去ろうとする彼を私は引き止めた
「これ、使って下さいっ」
鞄から取り出したのは折り畳み傘
パーカーを私に貸した彼の格好は薄いTシャツ1枚で、いくらまだ暖かくても雨が降れば濡れて体が冷えて風邪を引く
「お礼には、ならないけど...」
「... ...わかった」
私の傘を受け取った後、早く乗れとタクシーに乗せられた
ドアを閉められる直前、再度お礼を言ったけど彼は何の反応も見せず、タクシーのドアは閉められてしまった
運転手に行き先を聞かれて、答えるとすぐにタクシーは動き出して、未だ傘をささずその場に立ち尽くす彼の姿が徐々に遠ざかっていくのを
私はただ、タクシーの後部座席から見ていた
遠ざかっていく彼の姿は、今にも消えてしまいそうなほど儚く見えた
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娃莉紗(プロフ) - ゴリラの娘ですさん» コメントありがとうございます！そのお言葉だけで更新頑張れます...(´；ω；｀) (2021年10月25日 20時) (
レス) id: 877b6d7b57 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラの娘です - ゑ、めっちゃ好きです。更新頑張ってください(*- -)(*_ _)ﾍﾟｺﾘ。 (2021年10月25日 19時) (レス) @page5 id: dfc5bee49e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：娃莉紗 | 作成日時：2021年10月24日 19時
