【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ38)

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第三十五話ページ38

雪奈side

しばらくすると、外出していた千耶が戻ってきた

雪奈｢千耶、大丈夫ですか？｣

私が訊ねると、彼は目を逸らしたまま｢ああ｣と答えた
やがて、程なくしてーー
きどが軋んだ音を立て、八瀬姫が広間に姿を現す

千羽｢遅くなってしまって申し訳ありません。皆、遠路はるばるよく来てくれました｣

姫は、いつも穏やかな笑みを浮かべている彼女らしくない強ばった表情で広間に集まっている皆を見回す

千羽｢聞いていた通り、四国の鬼の頭領はまだ来ていないようですが・・・彼には後日、改めて知らせる事にいたしましょう。皆に、問いたいことがあります｣

問いたい事？
姫の問いたいことに私は嫌な予感がした

秦｢問いたいこと、というのは？十鬼衆全員に召集がかかったのですから、茶会や放鷹の為に呼ばれたわけではないのでしょうが｣

秦さんが冗談めかした声音で言うけれど、姫の表情は変わらない
集まっている十鬼衆それぞれと視線を合わせ、怖いくらい真剣な表情で告げる

千羽｢あなた方に、尋ねたいことがあります。・・・この中に、人間と関わりを持っている者はいませんか？｣

姫の問いかけに、場はしんと静まり返る
【人間と関わりを持ってはならない】というのは子供でも知っている鬼の掟でーー
十鬼衆の頭領全員を呼び出してまで問うことだとは思えない
この問いの意図を読み取れず、皆、戸惑っている様子だ
沈黙を破ったのは、千歳だった

千歳｢【関わりを持つな】って言われても・・・話しをするな、傍に近寄るなっていうのは無茶だろ。今の日の本は人間が仕切ってるんだし、全く関わりを持たずに生きていくなんて、できっこねえ。俺の場合、あんたの予言を聞く為だけにしょっちゅうここに来れるわけじゃないしな｣

千歳に続いて千岳さんも口を開く

千岳｢俺も、漂泊の者って身の上だから、人間と関わりを持たないわけにはいかない｣

そして千耶も

千耶｢・・・我が一族も、さほど裕福というわけではないからな。飢饉の際に食料を分け合ったり、どこで戦が行われているかを把握するのは生きていく上で必要だと考えるが｣

彼らの話を聞いていた姫は口を開いた