【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ37)

今日:33 hit、昨日:4 hit、合計:36,256 hit

第三十四話ページ37

Aside

A｢千耶殿、何かあったのですか？｣
千耶｢・・・どういうことだ？｣

尋ねると彼は怪訝そうな顔をする

A｢いや、怖い顔だったので気になっただけです｣

千耶殿は自分がどういう顔かに気づき、また視線を地面に戻す

千耶｢お前には関係のないことだ｣
A｢・・・そうですか｣

私は黙って彼を見る
どうやら、姫様のお告げのことではなく個人的なことを考えていたのだろう
しかし、初めて顔を合わせた時から思っていたんだが・・・この者はいつも無表情でよく分からないな

A｢まあ何があったかは知りませんが、そろそろ戻った方がいいんじゃないですか？｣
千耶｢・・・そうだな｣

千耶殿は八角堂に目をやり、再び私に目を向ける

A｢何ですか？｣
千耶｢いや、特に理由はない｣

彼は私のことを見つめるが、私はそれが不愉快になり彼に背を向けた

A｢では、私は仕事に戻ります。風邪をひかないでくださいよ｣

そう言って立ち去ろうとした途端

千耶｢待て｣

急に呼び止められ、私は足を止めて振り返った

A｢何ですか？｣
千耶｢明日の朝、お前に稽古を頼みたい｣
A｢・・・え？｣

彼の言葉に私は目を丸くする

A｢け、稽古を？私に？｣

もう一度尋ねると千耶殿は｢ああ｣と頷いた

千耶｢昼間、千歳と応戦しているお前を見て、俺も是非お前と剣を交えたいと思っていた｣

剣を交えたい？

A｢私と戦っても何も得られませんよ？それに私はただの絵師ですから、あなたの相手なんてできません｣
千耶｢ただの絵師だったのなら、あの千歳と互角に戦えないはずだ。お前はあの娘と同様、八瀬姫を護衛する役目があるのだろ？｣

うわ・・・なんか攻めてきた

A｢確かに八瀬姫の護衛の役目はもらっています。けれど、私はあくまで雪奈姉さんの代わりのです。あなたが思っているほど強くありませんよ？｣

前もってそう言うが、千耶殿は納得してくれなかった

千耶｢構わない。お前が弱いと言っても俺がお前の強さを知っているからな｣

やがて私は千耶殿の押しに負け、大きなため息をついた

A｢分かりましたよ。そこまで言うなら付き合いますよ｣
千耶｢感謝する｣

千耶殿は小さく微笑んだ

A｢では、明日また訪ねます｣
千耶｢絢華｣

また止められた

A｢まだ御用があるのですか？｣
千耶｢今度は俺のことは呼び捨てで構わない。【殿】は付けるな｣

その言葉にしばらく考え込んだが、私はとりあえず頷いた