【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ28)

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第二十五話ページ28

雪奈side

雪奈｢姫、雪奈です。入っても構いませんか？｣

私は姫の部屋の前で入ってもいいか尋ねる

？｢雪奈、来てくれたのね。いいわよ、入って｣
雪奈｢失礼します｣

木戸を開けて部屋に足を踏み入れると、香炉から立ちのぼる上品な香の匂いが鼻孔をついた
未来を見通す力を持つ八瀬姫がおわす場所だから
ここに足を踏み入れる時、私はいつも必要以上に緊張してしまう

？｢他の頭領たちは、もう揃ったのかしら？｣
雪奈｢はい。まだ四国の鬼が来ていないということですが・・・他の方は全員揃っています｣

今の状況を尋ねると姫は問いだした

？｢四国の鬼が来ていないって・・・何かあったの？｣
雪奈｢爺様方の話ですと、大阪に軍勢が集まっていたとの事ですけど・・・それに関係があるのでしょうか｣

その答えに、姫はしばらく考え込んでいたが、やがて・・・

？｢・・・一晩待ってみることにするわ。明日になっても来なければ、もう一度文を出すか、絢華に捜索を願うことにします｣
雪奈｢はい、わかりました｣

彼女の名は、八瀬千羽
当代の八瀬姫で、十鬼衆の中心的な存在だ
そして私の一族・・・涼森一族は、代々、八瀬姫の護衛という名誉な役目をおおせつかっている
すると、私は手に持っているものに気づき、姫に声をかけた

雪奈｢あ、姫。お話がそれますが、先程絢華から絵を預かって参りました｣
千羽｢え、本当？｣

姫はパアッと笑顔になり、私から絵を受け取る
絵を開けると、彼女は目を細めた

千羽｢まあ・・・やっぱり絢華が描いた絵は素晴らしいわ｣
雪奈｢素晴らしい？｣
千羽｢ええ。雪奈も見なさい｣

私は姫に見せられた絢華の絵を目に映す
その絵を見た私は、目を大きくする
姫が持っている上品な紙には、先程訪れた水源のような景色中に姫らしき人物が、まるで舞っているかのように自由に描かれていた
さすが、鬼社会の中で大きく注目されている絵師だ

千羽｢きっと絢華は、これから立派な絵師になりそうね｣
雪奈｢ええ。そうですね｣

私と姫は微笑み合った
絢華の将来が楽しみなのはお互い、同じ思いだから