兎と仔犬 (ページ19)

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JM side

『憧れの女性はAさんです！』

「え！？私？」

あ、まただ。警戒しなきゃいけない奴が増えた…

バラエティ番組の収録。

最近デビューしたらしい爽やか系の男の子が、MCの「憧れの女性は？」の問いかけにAの名前を挙げた。

きっとカメラに抜かれている俺たちの顔は凄いことになっていると思う。

特にジョングク。

ほら、目が笑ってないもん。

『Aさんのパフォーマンスに惚れて…』

そう言って顔を赤くする少年。

「本当！？嬉しい…握手しよう」

『うわぁ…どうしよっ』

少年の照れようが凄くて逆に笑いになってこの話は終わったけど、隣に座ってるジョングクから微かに振動を感じる。

貧乏ゆすりはじまったよ……

デビュー当時はファンからも同業者からも「紅一点」ということから色々言われてきて肩身の狭い思いをしてきたAだけど、元々の人見知りしない性格でどんどん周りの人を魅了していった。

最近ではアイドルや俳優の「好きな女性のタイプ」に名前が上がることだってある。

中には本当に下心みえみえで寄ってくるやつだっているから、俺達はできるだけAの側にいてそんな奴らを追い払ってきた。

ジョングクはちょっと度が過ぎてるけどね。

Aと仲良くなりたいと言ってくれる女の子にも嫉妬して、遠ざけてるから。

まぁ、理由があるんだけど…
その話はまた今度。

『あの、今日はありがとうございました。収録中にあんなこと言ってすみません…でも、本当にファンで』

「こちらこそ、ありがとう！嬉しかったよ。お互い頑張ろうね。応援してる！！」

『はい！！あの、Aヌナって呼んでも良いですか？』

収録が終わって、廊下を歩いていたら話しかけてきたさっきの少年。

意外と積極的だ。

JK「A、急がなきゃ。ごめん、また今度ね」

2人の間に割って入ったジョングクは、少年に見せつけるようにAの腕を掴んでこっちに引っ張ってきた。

ヒョン達は「あーあ」と苦笑いしている。

あの少年は…がーんって感じだ。

「やっとヌナって呼んでくれる後輩ができたと思ったのにー」

JK「俺が呼んでやるよ。Aヌナ、ヌナ～」

「違う！そういう事じゃなーい！！」

Aの反応を見て楽しそうに笑うジョングク。

Aをヌナと呼んでくれる後輩ができるのは、もう少し先になりそうだ。