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思えば初めて真面目に君と会話して和解のようなものをしたあのときも君は泣いていたっけなって。その後もなんだかんだタイミングのせいなのか君はよく泣いていたよ。
いつもそうだけどAちゃんは泣き方を知らない子供みたいに小さな小さな声で泣くんだ。その小さな肩を震わせながら声を押し殺してまるで隠れて泣く子供のように。それがこの子の泣き方なのかそれともそうするしかない、もしくはそれしか知らないのか。そこまで僕が知る権利も理由もなかった。だから思ったことは口に出さずに今はただただ、彼女の頭を撫でて大丈夫だよってして。
あの時犯人の顔は僕がはっきり見た。うちの制服を着ていたから学校の人間は確かだけれど誰かは分からない。けれどそんな野蛮なことをAちゃんに聞く必要は無い。学校ならば虱潰しに調べればきっとあいつの素性は明らかになる。あの気味の悪い笑顔を思い出しただけで苛立ちで腹が煮えくり返りそうだった。Aちゃんが落ち着いて眠りについたらあいつを潰しに行く。僕のこの手で。
幸いにも体調は回復してきているため問題は無い。ひとつあるとすればこの家に彼女を1人で置いていかなければいけないということ。彼女のふわふわな髪を梳きながら待っててね、って気持ちを込める。すぐ終わらせてすぐ帰ってくるから。
机に小さな水溜まりを作っているグラスに入った氷がカランと崩れる音がした。
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あけましておめでとうございます!
界隈が落ち着いてきたかな〜〜〜と思ったので鍵を外させてもらいました。
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作者名:月河 あをい | 作成日時:2023年11月23日 14時