猫かぶりは得意です 2【2j3j】 (ページ6)

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エントランスのドアの前まで来て気づいた。
あ、叶先輩の家オートロックなんだって。これインターホン押してる時間ある？押したとしても一緒に入られるんじゃ？とかなんか色々考えるけど男はどんどんこちらに近づいてきていて。あ、これ、だめなやつ？

「Aっ…！！」
『ぁ、え、かな、えせん、ぱぃ』
「とりあえずこっち、早く」

扉に背を向けながらどうしよってしてたら急に後ろからいつもの匂いがふわりと舞って少しの重みを感じた。上を向いてみたらすごく焦ったような顔した叶先輩がいて。早くって私の腕を少し強く引っ張ってエレベーターまで連れていく。エレベーターが閉まる時にちらりと見えた男はじっとこちらを見つめていて背筋が凍っていくのを感じた。
急いで出て来てくれたのだろうか鍵を開けることなく先輩の家のドアは開かれた。
ガチャガチャと鍵とチェーンを掛け終わった先輩がこちらにくるりと振り返ればなにか言葉を発する前に包まれた身体。

『っ、せんぱ、い私走った、ので汗、』
「うるさい、黙って」

ピシャリと遮断された言葉は叶先輩に届くはずもなくさらに強い力で抱きしめられた。真夏に走った私の体はきっと汗だくで、そりゃ汗だから匂いもその…あるわけで。それでも叶先輩はそんなこと知らないというかのように強く強く私の存在を確かめるかのように抱きしめた。あ、これ、すごい心配かけたなって思って申し訳なくなって行き場のない手がだらりと垂れる。

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