君の声【２】

70話 ページ22

だいぶ体もマシになってきたのでそろそろ帰るねと、隣に座る結弦に告げると真剣な顔をして話し出す

「来週にはトロントに戻るけど遠慮しないでLINEしていいから」

そう言ってくれるけど試合で勝ち負けが決まる大変なときに邪魔はしたくないし…
考えてることが分かったのか優しく肩を抱き寄せられる

「おれの事を思ってくれるのは嬉しいけど、連絡ないと何かあったんじゃないかって考えて集中できないから。なるべくおれもするからさ」

『うん、わかった』

笑顔で返事を返せば頭を撫でられた


帰る前お互いに別れを惜しんで抱きしめあう
次はいつ会えるか分からない
結弦と離れるのは寂しい、だけどいつまでもここにいられない

結弦を見上げ、涙をこらえて

『また…ね』

と、言えば顔中にキスが降ってくる
最後にこの2日間で1番甘いキスを唇に交わして、わたしたちは別れた


9月になるとTVからMARIAの曲が流れてくる
あとから知った話だけど前々からCMに使われることは決まってたけど、わたしが知れば意識しすぎるだろうという事で黙ったままレコーディングしたそうだ

CM使用曲ともなればTVの出演依頼も事務所にはきてるそうだが、もちろん出ないのでそれもまた話題になっていく

実際クラスのなかでもMARIAの名を聞くこともあり、葵と2人でにやけてしまった


11月下旬、結弦は地元・宮城で行われるNHK杯に出るため帰国した
恒例となった葵の解説を聞きながらTV越しに応援する

その後GPファイナル・全日本・四体陸選手権・世界選手権と試合は続いた為、結弦に会うことなくわたしたちは高校を卒業した

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