君の声【２】

65話 ページ17

「羽生選手、カナダに行っちゃったね」

『そうだね』

今年も同じクラスだった葵と昼休みを過ごす
結弦とつきあい始めたのは恥ずかしくてまだ話してない
ちなみにやっと結弦って呼ぶ事に慣れてきたところだ

「ねぇ、なんでそんな普通なの？ 拠点変更の発表の時だって驚かなかったよね？」

『本人から聞いてたから』

「えぇ、いつ？」

『世界選手権から帰国して１週間後だったかな？ 東京で結弦と会った時』

「いっいま、結弦って言ったよね!?」

じーっと見てくる葵をごまかす自信はないので、つきあう事になったいきさつを話した

「よかったね〜。でもカナダと日本じゃますます遠いね」

『まぁ、会えなくて寂しいのはしょうがないけど…。時差のせいで声が聞けないのは少しキツいかな』

「A…」

『でも寂しいと思うのはわたしだけじゃないと思うし、結弦がスケート頑張ってるからわたしも頑張ろうって思うんだ』

「えらいよー、A。で、次はいつCD出すの？」

『夏休みにレコーディングあるよ』

早いペースでCDを出していくのは社長の案だ
【MARIA】の名前を印象付ける為らしい


6月アイスショーのために帰国したと結弦から連絡はあったけど、なかなか時間は取れないみたいで会えないまま夏休みに入った

新曲のレコーディングも終わったので、両親との約束通り夏休みの宿題に取りかかっていた
去年は結弦に数学教えてもらってたんだっけ
なんて思ってるとスマホが着信を知らせる
着信音で結弦だと分かったので慌てながら出た

『もっ、もしもし？』

「ふふっ、慌ててるけどどーしたの？」

『結弦の事考えてたら電話かかってきたから、ちょっとビックリしただけ』

「……(かわいすぎでしょ)」

『どうかしたの？』

「なんでもない」

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