君の声【１】 (ページ9)

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８話 Yside ページ9

『今日初めてスケートを生で見たんだけどジャンプの音ってすごいんだね』

「あー、テレビじゃあんまり聞こえないもんね。ねっ、俺のスケートどうだった？」

『えっ、あっ、う～ん。スゴかったよ…』

「なにそのビミョーな感想。まさか見てなかったとか？」

『いやっ、そうじゃなくて(汗)
ホントに申し訳ないんだけどほとんどの人の名前と顔が分かんなくて…。』

「…どれが俺だったか分かんなかったってこと？」

昨年シニアデビューして２月の四体陸選手権では表彰台にも乗ったのに…まだまだだな、俺

『ホントにゴメンね。でもみんなすごい楽しそうだった。笑顔がすごくキラキラしてて見てるだけで元気になれたよ。』

『３月に震災があったでしょ。わたしの所はそんなに被害はなかったけど、テレビで東北の映像を見るたびに悲しくて…笑っちゃいけないって思ってた。でもお母さんが「悲しい気持ちだけ抱えてるより少しでも楽しい気持ちも抱えた方が前に進めると思う」って言ってくれて。それから自分の夢も見つかったんだ。だからきっと結弦くんたちのスケートはたくさんの人の力になってくれると思うよ』

Aちゃんの言葉を聞いてるうちに泣いてた

震災でスケートをこのまま続けていいのか悩んで、でも支えてくれるたくさんの人がいることに気づいて…
自分にできることを頑張ろう、そしていつか恩返しができればいいなっていう気持ちが伝わってる気がしたんだ

Aちゃんが話終わって俺をみた途端びっくりしてる事に気づくけど、涙を止めることはできなくて
Aちゃんがバッグの中を探りながら声をかけてくれる

『結弦くん、大丈夫？わたし何か変なこと言っちゃっ……』

今さらだけど泣き顔を見られたくなくてAちゃんの首に腕をまわしてしまった

咄嗟の事とはいえ自分の行動にびっくりしたけどAちゃんの方が戸惑ってることが腕から伝わってくる

いつまでもこのままではいられないから

「Aちゃん、ありがとう」

そう言って少しだけ腕に力をいれた