ひとりじめ【緑】 (ページ29)

今日:10 hit、昨日:40 hit、合計:361,260 hit

29 ページ29

・

先ほどまで並んでいたところに再び戻ってくる。

中「俺、ビビリでヘタレなのに頑張ったと思わない？」

今はその言葉に頷くだけで精一杯だった。

中「泣きそうな顔してる」

「っ…すみません、」

中「良いよ、俺見てないから」

「…仲良いと思ってたのはっ、…私だけだったんですかね？…これから仕事で一緒になることあるだろうけど、…っ、今まで通りって難しいですか…ね？」

我慢していたものが一気に溢れる。

中「相手次第じゃ無い？相手が素っ気ないんだったら、無理に仲良くする必要ないし。いつも通りを望んで話しかけてくるなら、それに答えてあげたほうがいいし」

「っ…はい、、」

中「…A、ごめん」

「ちょ…」

大好きな香りに包まれる。

・

中「…好きだよ…誰にも渡したく無いくらい好き…」

「っへ！？」

今、好きって。

石「おーい、お待たせ。帰るぞ！」

「っ！」

石井さんの声がして海人君から急いで離れる。

「石井さん！お疲れ様です！」

早く乗れと石井さんに促されてドキドキした感情を隠すように素早く車に乗り込んだ。

・

石「海人の家この辺だっけ？」

中「そうです。すみません、送ってもらっちゃって」

石「いや、良いんだよ。佐々木と荷物番してもらったし。通り道だから」

中「ありがとうございます」

石井さんと海人君が話していても全く頭に入らなくて、

窓の外を流れる景色を眺めた。

さっき、海人君が言った事が本当なら、、

いや、あれは私を励ますために言ったんだ。

そうであって欲しいと、心で願った。

・

石「ほい、着いたぞ」

中「ありがとうございました！…A、また後でね？」

「っはい。お疲れ様でした」

また後で、か、

色々ありすぎて少し疲れた。

ただただ、ぼーっと、

エントランスに入っていく彼の背中が見えなくなるまで見つめていた。

・