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「どうしたの、藤原」
「え?」
「ぼーっとしてた。箸進んでないし。思ってたのと味違った?」
「いえ、そういうわけでは。大丈夫です」
嘘だ。選んだ定食の味に文句はないが、もっと俺を魅了する料理が目の前にある。
「ただ、次は俺もA先輩の作った弁当が食べたいと思って」
「えっ」
「もちろん、先輩の負担にならなければですが……お願いできますか?」
「はあ、別に2人も3人も変わらないからいいけど、大した味じゃないよ」
A先輩は困ったように笑った。可憐だ。
「今日のもおいしそうですね」
「藤原って、もしかして食いしん坊? 食べたいのあるならあげるよ」
食いしん坊ではないが、予想外の提案に俺はつい即答してしまった。
それに、さっきから気になっているものがある。
「では、その切れ込みの入ったウインナーを……」
「タコさんウインナー? 意外とかわいいの選ぶね」
「なるほど、タコなんですね。よく見たら、ゴマで目が付けられている……精巧なつくりだ」
A先輩の差し出した弁当箱からタコさんウインナーなるものを1つ箸でつまませてもらった。
4本足は外向きに反り返り、ゴマが2粒、目にあたる位置についている。なかなか愛らしい。沙絵が喜びそうだ。
「精巧って。割とテキトーなんだけど……」
「お前、タコさんウインナー知らねえの?」
二階堂先輩は素で驚いているようだった。
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作者名:三宮 | 作者ホームページ:https://alicex.jp/riiiiidoooosog7/
作成日時:2023年9月5日 0時