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田「 そこ座って 」
と、指さされた椅子に大人しく座る。
樹は手際良く絆創膏や消毒を用意し始める。
「 … なんか、慣れてるんだけどなんで？ 」
あまりにも保健室の中の場所を把握しすぎじゃない？
「 俺、１年の頃保健委員だったから 」
「 そう、なんだ 」
意外だな、保健委員だなんて
サボってそうって思ったけど、
ある程度の場所が分かるほどには真面目にやっていたんだろう。
「 意外でしょ、俺が保健委員だったの 」
なんでこんなに心の中を読まれるんだろう。
私って分かりやすいのかな、なんて
ひとりで考えていると目の前に彼が座った。
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優しく私の膝に触れる細い指
「 … 細いね、相変わらず 」
昔から細かったけど何も変わってない。
田「 なに？太ってほしいの？ 」
ケラケラ笑いながら私の足に消毒をする。
「 そういうことじゃないけど、折れそう 」
「 そんな脆くねぇわ 」
……前に、戻ったような気分だった。
ふたりで冗談言い合って、
たくさん笑って沢山喧嘩して。
「 はい、終わったよ 」
「 … ありがとう 」
綺麗に貼られた絆創膏。
その絆創膏に触れたときだった。
「 さっき、手振ってたね 」
「 お前が大好きな先輩に 」
膝から目を離して彼を見る。
「 … 見てたの？ 」
「 見てたよ、ずっと 」
彼は良く私を勘違いさせるような発言をする。
"俺が気になんの、教えてよ" だとか、
今も "見てたよ、ずっと" だとか。
「 … そういうの勘違いするからやめて 」
こんなこと言ったらバカにされるんだろうな。
「 なに勝手に勘違いしてんの？ 」って、
「 いいじゃん、勘違いしてよ 」
またあの涼しい風が私たちを包んだ。
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作者名：Mois
| 作成日時：2020年9月29日 22時
