【刀剣乱舞】短編詰め (ページ5)

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あなたとわたしと4 ページ5

ふわり

足音の主とすれ違う。風が止まった。
すれ違った人からどこか懐かしい感覚を覚える。
ふと立ち止まって、振り向く。

相手も、不思議そうにこちらを見ていた。
視線が絡む。

走馬灯のように脳内を知らぬ記憶が駆け抜けていく。

満ちて欠けてを繰り返す月を見ながらくだらない話をしたこと。

流れる星をみてずっと一緒にいたいだなんて願ったこと。

明け行く空をみて今日も朝が来たね、だなんて笑いあったこと。

鼓動の止まった主を見て、時が止まってしまったこと。

ああ、そうだ。

これは、この大切な物は。

優しくて、あたたかくて、愛おしい、主との記憶。

この時を、ずっと待っていた。
己にかけたる呪い。主が語る"また"が来るまで何度でも生を受ける呪い。代償は、記憶。

涙は出なかった、それでも、あの日あの時、時は止まった。
審神者無くして、時は流れてくれなかった。

主は、約束を守ってくれた。この時代で、待っていてくれた。

涙が、溢れた。

主がこちらに走りよって手を差し伸べてくる。
あの時と、初めて会った時と同じ不安そうな顔。

刀の状態で主の前に置かれ、主は緊張した面持ちで手を差し伸べる。触れられた手から、審神者業への不安、未知のものへの恐れを感じた。

これから、共に歩んでいこう。

そんな思いを胸に。

目の前が真っ白になり、ひらひらと舞う桜が視界を横切る。

差し伸べられた手に、手を重ねる。

これは終わりなき旅の始まり。まだ始まりに過ぎない旅立ちの物語。