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台風は危ないよねって話 ページ11

『台風328号の中継です。現場の白鳥さん〜?』

『はい、こちら白鳥です!!!凄まじい風と雨です!!近隣の方は外に出ないように______』



「あ、中継の場所すぐ近くのところだよお母さん」

料理をしていて背を向けていた母がこちらを向く。テレビの中では白鳥と呼ばれたアナウンサーが意味を為していない雨合羽を着ながらもはや叫ぶように中継していた。

「あら、ほんと…って、あれ?」

心地よいリズムを奏でいた包丁を置き、こちらに寄ってくる母。テレビの画面を注視し、ハッとしたように指を指す。

「この人!近所のおじいちゃんじゃない!?神社の神主の!!!」

そう言われ、慌てて母の指先を見る。本当だ。こちらも意味を為していない雨合羽を着て、この風の中一歩一歩踏みしめるように曲がった腰に手を添えながら歩いてるその姿は、紛れもなくあの神主さんだった。
あのおじいちゃんは畑を持っている。「意外と楽しくてなあ」と言ってよく作物のおすそ分けをしてもらっているから間違いない。

「まさか…畑見に行った!?」

台風の日に畑を見に行くおじいちゃんって本当にいるんだな!?
いやそんな冷静なツッコミをしている場合ではない。畑を見に行くおじいちゃんは亡くなってしまうこともあるという。

「お母さん!私行ってくる!」

「馬鹿!あんたまで行って二次災害起きたらどうすんの!!待ってなさい、警察に連絡するから!」

ってコラ!!!!!

というお母さんの声を背にドアを開け、駆け出す。ごめんお母さん、だって放っておけないよ。警察の人だってこんな台風の日にそう早くは来れないだろう。危険なのも承知の上。死ぬのは怖いし台風の日に外に出るのも怖い。それでも足を止められないのは、あのおじいちゃんが消えてしまいそうな気がしたから。

台風は危ないよねって話2→←似た者同士な話2(安さに)



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作者名:零磨 | 作成日時:2022年6月24日 21時

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